「須田小『ビオトープ』(仮称)」物語

須田小学校職員玄関前に立つ「二宮金次郎」像の周りに作られた「須田小『ビオトープ』(仮名)」

これは、何?

須田小の子供たちの身近に、常に観察可能な生き物はいません。以前は、どの学校でも、うさぎや鳥、魚は、どこの学校でも飼育されていました。ところが、空っぽの飼育施設(小屋、池)だけを残しているのが現状です。

原因の一つは、世話の大変さです。生き物は365日世話をしなければなりません。ですから、動物担当の先生は長期の休みに入る前は大変でした。面倒を見てくれる家庭や教職員捜しをしないと、担当者自身が責任をもってしなければなりません。餌やりを子供の当番にすることも、昨今の登下校の安全確保の面からも、学校で飼育することを難しくしていることにつながります。

だから、人工でもいいから、「ビオトープ(自然に近い環境を人の手で作り上げたイケている池)」づくりをしようと思いました。最小限のメンテナンスで、持続可能な「身近な自然環境」を作り上げようと思いました。

便利にする程、手間がかかる?

そんな思いから、平成30年5月(運動会前)から下堀を始めました。あれだけの広さでも、意外にも一日で完成しました。なるべく自然な状態にするために、コンクリートで固めることはせず、土の保水効果を上げる溶剤を混ぜることにしました。須田の地元の業者の方をつてに、土木専用工事に使われている物を土に混ぜ込みました。普通の土と違い、たまった水が染みこむことを抑制するなど効果は抜群でした。しかし、その分(たまり水なので)水温が高くなるにつれて「藻が発生」して、水質の維持が難しいことが分かりました。
そこで、専用の「止水シート」を敷設することに変更しました。また、蒸発による水位の下降を押さえるための給水管の敷設、清掃のための排水管の敷設と、様々な「維持を便利にする」ために、設計や工事に手間がかかり、結局取りかかったのは平成30年8月に入ってからでした。
「ビオトープ」 ~ 金次郎の背中を見ながら
ビオトープ【続き】 ~ 金次郎の背中を見ながら
ビオトープのシートを敷きました
やっと……ビオトープ

 

 

 

 

 

 

 

 

蟻穴が堤防を決壊

ここまで順調に進んでいて、9月のはじめには生き物を放すことができると思っていたのもつかの間、敷設したシートに穴がある「らしい」ことが判明しました。ここからが長い「穴」探しでした。「ここだ」と思える場所を見付けては補強を繰り返す日々でした。と、気がつけば季節は夏から秋に変わっていました。まさに「蟻穴が堤防を決壊」させることに思い知らされた時間でした。

時間とは不思議な物で、「これだけ時間をかけたんだから」と妄想が始まり、「子供が生き物により近づけるような物(橋)を付けたくなり」、秋を超え冬まで作業が長引きました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あっという間の満水
いつでも・だれでも・水の上でも
夏が来れば思い出す。今はもう冬…・ビオトープ
こちらもギリギリ完成! ビオトープ

残念ながら、放流予定のメダカたちは、理科室と校長室前の水槽で越冬することになりました。来年春の「移住」に向け、水質環境保全・維持のための水生植物のことを準備中です。

小さな池みたいな存在の「須田小『ビオトープ』」を何に使う?

・メダカを横から(水槽目線)だけでなく、上から(自然目線)見て欲しい。生き物は自然が創った彫刻です。様々な目線でみることで、その体のつくりの素晴らしさを感じて欲しい。

・メダカが住みやすい環境を、この小さなビオトープで作り上げる体験をして欲しい。どうしたら、水質を良い状態に保つためにどうすればいいのか。考えてほしです。

・以前はどこの用水路や小川等で見掛けた「メダカ」も現在は「絶滅危惧種」に入っています。原因は様々なで一つに絞ることはできませんが、私たちの生活の利便性と関係があることは確かです。人間の利便性が向上すると、メダカなどの動物にとって「当たり前の環境の変化」が起こり、その「当たり前の環境」を維持するためには、途方もない手間が必要になる。人間生活の利便性と動物の生活環境の維持の両立について、子供達に考えて欲しいテーマです。

「須田小『ビオトープ』(仮称)」の中央に立つ「二宮金次郎」さんは、江戸時代末に様々な改革を行った方ですが、その中に「天道と人道の両立」を訴えています。天道、つまりは自然のままに生きることでは、私たちは暮らしていくことはできません。環境保全と開発のバランスは重要です。人道、つまりは人の行いが天道に入りすぎると環境破壊や環境汚染に引き起こすことになります。この天道と人道の両立の大切さは話し合いや読書だけでは深まりません。金次郎さんのような実践を伴う必要があります。

これらの追求には、子供が、自然から受ける影響を残す環境で、自由に研究できる環境が必要です。そのために、ここまで時間と手間を掛けて「須田小『ビオトープ』(仮称)」を作り上げてきました。

【補足】

平成32年度から完全実施の新学習指導要領では、「子供自らが問題を解決するために、様々な考えを比較・検討しながら、よりよい解決(納得解)を見付けていく過程」を重要視しています。その一助となるような活用の在り方を考えています。