ミニ法話

われ、山を愛するとき、山、主(ぬし)を愛す

東龍寺住職 渡辺宣昭

昨年(平成十年)は、私自身、地球環境問題をとても身近に感じた一年でした。東龍寺では、皆様のご協力のお陰で、照光殿の建設が始まりました。それと時期を同じくして、護摩堂山登山道入り口の寺の土地を含めた地域に温泉施設建設の話が持ち上がりました。
そんな中、蒲原地域は、三十年ぶりの集中豪雨にみまわれました。寺でも、以前、山を一部削った崖が、崩れました。これは、自然の山を造成したが為に起きた災害でした。
温泉施設を計画した場所は、寺の建物のすぐ斜め上に位置します。もし開発をすれば将来にわたって崖崩れなどの危険を背負うことになることがわかったのです。この雨のために町側もとても無理と断念をしました。
私は、この度の雨が、「山を大切にしろ、今までの住職が、山を大切にしてきたからこそ、寺も守られてきたのだぞ」と、教えてくれた気がしてなりません。
永平寺を開かれた道元禅師は、たいへん山や自然を愛され、「われ、山を愛するとき、山、主を愛す。」といわれ、山深き永平寺を開かれ、自然とともに生活し、大自然のありとあらゆるものが仏のお姿であると説かれました。そこには、私たち人間は自然を自分の思うようにしようというのではなく、自然と共に、生きていく姿勢、もっと深めれば、ぞれぞれの立場になって、そのありようを考えていくことを教えて下さっています。『人、山を見る。山、人を見る。』人が山を見ているように、山も人を見ているんだという姿勢を持たなければいけないと思います。
水子地蔵尊の山門脇・池の島への御遷座も無事終わり、いよいよ照光殿の建設にかかり、十一月には完成します。二階は坐禅堂、一階は三つの部屋に仕切られる広間です。自然の中で身も心もリフレッシュできる場所となるよう心がけていきたいと思います。

第18号| 第14号 | 第13号 | 第12号 | 第11号 |

Copyright (c) 2005 東龍寺 AllRights Reserved.