より速く飛ぶために(マクレディー理論の基本)

 競技で強いパイロットは、気象の判断力、サーマルで上げる技術だけでなく、速く飛ぶ技術にも優れています。効率よくサーマルを乗り継いでいくための独特の理論であるマクレディー理論は、速く飛ぶための強力な手段になります。それはどんな考え方なのでしょうか。

 今、自分がサーマルの中でプラス2で上昇していて、1キロ先に同程度のサーマルがあるものとして、そちらへ渡って行くことを考えた時、サーマル間の空域が無風に近くシンクもなければ、普通ポーラーカーブにしたがって最良滑空比で飛ぶのが一番ロスが少なそうに思えます。

 たとえば最良滑空比10、その時の速度が10m/sの機体なら、1キロ先のサーマルにたどりつくのは100秒後で、それから高度ロス100mを回復するのに50秒で合計150秒かかることになります。しかしこれは、高度的には効率の良い飛び方であっても、最も速い飛び方ではありません。



 もっと速度を出して15m/sで飛べば、サーマルに67秒でたどり着きます。そのぶん当然高度ロスは大きくなりますが、それが150mだったとしたら、回復するのに75秒。トータルで考えれば空間中の同一ポイントへは最初の飛び方より早く着けることになります。もしもサーマルがもっと強くプラス4が期待できるとしたら、上げなおす時間はもっと短くなり、同一ポイントへ105秒で着くことができます(10m/sで飛んだ場合は125秒)。このような飛び方でサーマルをいくつも渡っていけば、時間短縮の効果は明らかに大きくなっていきます。

 上の例から推測できるように、傾向としてサーマルのコンディションが良いほどサーマル間を速く飛ぶことができ、無風帯をいつも同じ調子でポーラーカーブの通りに飛ぶ事は時間をムダにする飛び方ということになります。だからといって極端にスピードを出し過ぎれば高度ロスが大きくなり、高度回復のために結局遅くなってしまうこともあるでしょう。

 ではどのように飛べばもっとも速いのか? マクレディーの理論によれば、サーマルで自分が上昇している状態をゼロとし、周囲のサーマルの無い空域は、相対的にすべてシンク帯と考えます。上の例のように実質プラス2の上昇が期待できるなら、周囲の無風の空域は相対的にマイナス2のシンク帯です。そこに自分の機体のポーラーカーブをあてはめて、そのシンク帯の中での最良滑空比になる速度で飛べば良いのだそうです。相対的なシンク帯の中を、いかに効率的に渡りきるかを考えればよいのです。

 高性能なバリオには当然のようにマクレディー計算機能がついていますし、現在の速く飛ぶことが要求される競技ではマクレディー理論は必須のようです。バリオに計算機能がなくても、ある程度正確な自分のポーラーカーブのデータがあればグラフ上でシンクに応じた最適な飛行速度を割り出せますので、それを元にフライトすればかなり助けになるはずです。

 マクレディー理論はサーマルが強いほど効果を発揮します。ただしそのためには当然ながらサーマルを確実にとらえて上昇できることが前提です。そしてサーマルでのゲインを有効に使うために、今までより高低差を大きく使った飛び方になりますので、実際には走り出す高度の見極めが問題になりそうです。自然が相手のフライトですから、常にマクレディー理論が示す速度に忠実に従えるものでもないでしょう。次のサーマルが期待した場所になければ沈下をゆるめて探さなければいけないでしょうし、そのための高度の余裕を考えたら、どれだけ高度を獲得してから走れば良いか、難しいところです。しかし上手くいけば今までより確実に速く飛べるはずですから、この理論を実践してみて損はありません。普段のフライトでもいろいろ試して、その効果を確認してみてください。要領をつかめば、あなたの飛びはいきなりハイレベルになるかもしれませんよ。

⇒マクレディー曲線の作図
⇒数式によるマクレディー理論の検証


注:このページの解説は、正式なマクレディー理論の書籍に基づくものではありませんので、解釈に間違いがあるかもしれません。ご了承ください。もし間違いがありましたら迅速に訂正いたします。

2006/06

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