ボルドー(Bordeaux)地方

フランス全体のAOCワインの約三分の一を占め、年間約5億本の生産量があり、世界で最も広大な高級ワインの生産地帯といえます。
ボルドー地方の気候は温暖で、雨が少なく、土壌は痩せていて、しかも水はけがよく、葡萄栽培には非常に適しています。『よいワインは、よい葡萄から』、これがワイン造りにおける鉄則です。
ボルドーのワイン造りの特色の一つとして、単一品種のぶどうから造られるのではなく、ほとんどのワインが数種のぶどうのブレンドから生まれるという事です。ブレンドの比率は、シャトーごとに異なりますし、その年の葡萄の出来によって変えられます。すべては、シャトーの「メートル・ド・シェ」と呼ばれている醸造責任者の手にゆだねられています。

メドック(Médoc)・オーメドック(Haut Médoc)地区
ボルドー市の北に位置し、ジロンド河口左岸に広がっている地区で、上流がオーメドック、下流がメドックです。
この地区は土壌が多様性に富んでいるため、こしが強く、長期の熟成を要するタイプから、繊細で早く飲めるタイプまで幅広い風味のワインが生まれます。
オーメドック地区はボルドーの赤ワインの代表産地で最も洗練されたシャトーが綺羅星のごとく、光り輝いているところです。
メドック・オーメドック地区を北から順にワインの特徴を探っていきましょう。
a) サンテステフ(St. Estèphe)
粘土質土壌で土質はやや重く、ワインは色の濃い、果実の凝縮された芳香をもつどっしりとしたワインです。
b) ポーヤック(Pauillac)
砂利を多く含んだ土壌は、とくにカベルネ・ソーヴィニヨンの栽培に最適です。豊かで、複雑な香り、バランスの良い味わいで、エレガントでスケールの大きなワインに育ちます。世界最高の赤ワインを生み出します。
c) サンジュリアン(St. Julien)
小石混じりの砂利土壌で河に近いため、水はけがよく、芳醇でエレガントなワインが生まれます。華やかなポーヤックと繊細なマルゴーの間に位置しているので、両者の特質を程よく兼ね備えたバランスの良い味わいです。
d) リストラック(Listrac)
土壌は小石混じりの粘土質です。エレガントさとシャープさを兼ね備えたタイプのワインです。一般には熟成は早めといわれています。
e) ムーリー(Moulis)
サンジュリアンとマルゴーの間にあるメドックで最も小規模な村で、石灰を含む石礫土壌の産地です。香り高く、柔らかで軽やかなワインとなります。
f) マルゴー(Margaux)
オーメドック最南端の村。土壌中の砂利の層は一番深いため、水はけが非常に良く、繊細で優美なワインをつくり出します。ことに最上のヴィンテージのマルゴーは最高級のボルドーワインとなります。
グラーブ(Graves)地区
ボルドー市の南に位置し、土壌はその名の通りグラーブ(砂利、小石の意)の多い土地で、赤・白ワインを産します。ひとつのシャトーで赤と白の両方を手がけるのはボルドー地方では珍しい地区です。
グラーブの赤ワインは、洗練された香気と見事なルビーの輝きをもつエレガントなワインです。白ワインは比較的酸味が少なく、豊満で香り豊かな洗練された味わいです。
サン・テミリオン(Saint-Emilion)地区
ローマ時代から高級赤ワインを産しています。土壌はヴァラエティに富んでいますが、大部分は白亜質の粘土質土壌で、ワインにきめ細かさと力強さ、複雑な香りを与えます。
口当たりが柔らかく、渋みが少なく、酸味のスッキリとした赤ワインが生まれています。
ソーテルヌ(Sauternus)・バルサック(Barsac)地区
世界で最も素晴らしい甘口ワインを産する地区のひとつです。貴腐ぶどうから造られる独特の甘口白ワインは、琥珀色のローブを持ち、アカシアの花から採った蜂蜜のような香りのする、甘くアンズに似た酸味を感じさせる素晴らしいものです。
アペリティフやデザートワインに最適です。
ポムロール(Pomerol)地区
オーメドックのきめ細かさとサンテミリオンの力強さを秘め、余韻の長い濃縮された香りと力強い味わいが特徴です。特に比較的早く飲み頃がくるということで人気を集めています。