朝日、飯豊連峰の峠越えクロカンに挑戦


弥彦友の会 本田敏夫

2004年4月25日 晴れ 西の風7m

豊栄の自宅から弥彦に向かう途中、この時期の田んぼには水がいっせいに入り苗代の準備に入る。5月連休の田植えに合わせて農家は忙しい。そんな田園風景を見ながらも空が気になっていた。寒冷前線が通過後の昨日は西風が強く、時折冷たい雨が降っていた。昨夜も雨が降っていたのでまだ寒気が残っていると感じていた。

朝になり、予想したとおり風が少し強いものの青空だ。どんな展開になるか「神のみぞ知る」というところだが、ひたひたと水の入る田んぼを見ながら今日のこの日は、弥彦エリアではクロカンの最終日になることは間違いない。それが過ぎれば秋口の頃にしかチャンスは巡ってこないだろう。

テイクオフ広場は4機のリジッドと10機ほどのハングがセットアップに忙しいが、やはりリジッドのほうは積極的だ。風が強めなせいかハング組は様子見もあってゆっくりしていた。西風7〜8m、ランチャー正面では芽吹き始めたばかりの樹木は全体に揺れている。 後ろのセメント吹きつけ壁上樹木からは「ヒュイー、ヒュイー」と長く柔らかな木の鳴き声さえ聞こえていた。

11時5分テイクオフ。リッジで北尾根を往復しながら一気に高度を上げる。サーマル雲ができた時には1350mに達したが出るタイミングを待った。他のリジッド3機も次々にテイクオフ、同高度につけてきた。弥彦山上空から越後平野を見渡す限り、高速道の先にサーマル雲が連なっているがそこまで行けるかどうか賭けるしかない。

11時50分、弥彦上空の高度1250mからクロカンの旅にでる。まずは新津方面にコースを定める。高速道を通過し中之口村付近からサーマルを拾い始める。白根市の南側から信濃川を横切り小須戸町の北側に出る。高度は1200mまで回復、南西の生暖かな風が吹き、油かすのような肥料の臭いがしていた。一時は600mほどまで落とされていた。

新津の秋葉山ゴルフ場手前で1500mまで上げる。それから阿賀野川の左岸から右岸に移り、五頭連峰に向かう。高度を800mまで落としてしまい宝珠山は割愛したが途中の尾根で1200mまで回復し、新雪に覆われた菱ガ岳、五頭山、松平山、金鉢山の頂上をかすめる。新緑と新雪のコントラストが実にきれいだ。五頭連峰の上空は雲の連なりで1200m前後の高さで良い緊張感を持って飛ぶことができる。

次のハードルは加治川を越えて二王子岳に取り付くことだ。またしても加治川上空を通過する頃には800mまで高度を下げた。渋いながらもサーマルを拾いながら二王子岳の高知山斜面に取り付く。

二王子岳の登山ルートの独標(標高1000m)付近に達したときだった。バリオが勢いよく鳴き始めた。それこそでっかいサーマルだった。メーターのマークが続けて二度も振り切れた。ものの1分たらずで1650mに達した。二王子岳にはよく登山する私はいつもその大きさに感動している。今日の二王子岳は真っ白い新雪をまとっていて、眼下に見下ろす景色は箱庭のような印象だった。そしてその東にはひときわ白く飯豊連峰が緩やかな稜線を見せていた。

風倉山、牟礼山と北上し荒川を横断。高度は700mしかなく北西の村上市方面を見ていた。積雲がボコボコしていた湯蔵山から南西に延びる尾根斜面でサーマルにあたる。1500mまで回復する。荒川上流方面には山形県小国町が近くに見えていた。小国までなら確実にいける。その後は小国に到達してから考えればいい。迷うことはなかった。

サーマル雲も連なり西風のフォローに後押しされた。じっとしていてもバリオは「ピピ、ピピ」と鳴り、沈下は小さい。荒川の右岸山岳地帯をほぼ直線に縦断して小国町に入った。ほとんど高度をロスせずに町のだいぶ北側を通過、そのまま荒川右岸の山岳地帯を一路東に走る。静かな大空から山岳を見下ろしながら「今飛んでいるのは夢だろうか」と思った。その時の対地速度は90km前後。その先では対地速度は90〜100kmで飛びつづける。一時は110kmを記録した。荒川沿いを走る国道113号線はトンネルも多く近くには グライダーを降ろすところなどない。真っ白に威厳を見せる朝日連峰を横に見ながらも気持ちは落ち着いていた。

高度が1200mほどでいくつもの尾根を乗り越えた。盆地の町が見えて来たときはさすがにほっとした。真正面の奥には蔵王山が白く大きくたちはだかっていた。

不思議なことに山岳地帯では高度を長くキープできたのに盆地に入りかけた途端から高度が落ちてきた。機体も左右に振られたりして不安定だ。盆地特有の風の流れがあると思われる。高圧線の上200mほどを通過したが気持ち良いものではなかった。ランディングは国道113号線沿いの田んぼとし、回収しやすい場所に決める。西風がかなり強いので慎重になった。田んぼに無事ランディング。時間は14時13分。

最上川の土手下の草地に移動する。ケイタイで着信のあった柏森さんに電話する。五十嵐さんにも電話する。皆さんぶったまげていたようだった。お騒がせしました。

近くのドライブイン「幸来」で聞くと、南陽市梨郷(りんごう)という地名だった。帰りの電車も最寄の「今泉駅まで送って上げますよ」と親切にしていただいた。

そんなところに横山さんからケイタイがあり、ここから程近い十分一のハングエリアのノブさんに連絡したところ、「新潟市から十分一に来ている人がいるので機体は積めないけど人間だけ乗せてもらえそう」ということだった。結局、グッドタイミングでそうして頂くことができた。機体をケースにしまい、ドライブインに戻ったところにノブさんと新潟市の太田さんが来てくれた。機体はノブさんの車に乗せしばらくの間預かってもらうことにした。

太田さんには住まいの東新潟までの予定ではあったが、弥彦のショップまで送っていただく。ショップには横山さん、五十嵐さん、小林(誠)さんが待っていた。ありがとうございました。



主なフライト記録

※ランディング地点
 山形県東置賜郡川西町大塚

※直線飛行距離(GPS計測)
 117km

※総飛行距離(GPS計測)
 175km

※最高獲得高度
 1650m(海抜)

※総飛行時間
 3時間8分

2004年4月29日 記

●飛行軌跡画像 (773キロバイト)

●カシミール用トラックデータ (高度データはありません。また弥彦周辺のデータが切れています。ZIP)