『世界の宝・合掌のこころ』


平成13年6月25日 加茂法話会


一、 1995年12月、ドイツ、ベルリンで、開催された、第19回世界遺産委員会で、岐阜県白川郷の合掌作りの家屋が世界遺産リストに登録された。

二、 合掌家屋は二百年〜四百年前の建造物が多く、二十五年〜三十年に一度、住民総出で行われる屋根のかやふき替えには、一軒の方屋根で一千〜一千三百万円の費用がかかるなど、維持管理には大きな負担がかかっている。このため村は昭和六十三年、三億円を目標に白河郷合掌集落保存基金を設立し、現在に至る。(白河村ホームページを参照)

三、 合掌作りの世界遺産リスト登録の決め手は、大勢の人々が協力し合ってあの大きな屋根に上がっての作業風景であった。
村人それぞれが、お互いの合掌屋根を守るため、生活を守るためにそれぞれが協力するその姿が世界遺産と評価された。白河の人は、この人と人の営みと、心と心のつながりを「結(ゆい)」と呼ぶ。

四、 仏教では三つの宝、仏(ぶつ)・法(ほう)・僧(そう)の三宝(さんぼう)がある。この中の僧法(そうぼう)は仏教を人生の理(ことわり)として生きる私たち人間の集まり(サンガ)を意味している。お釈迦様の御教えを縁とした「結(ゆい)」である。

五、 便利な生活の代償として、人と人の付き合いが薄れている現代。面倒くさい、迷惑をかけたくない、気を使いたくない、使わせたくない、と私たちはどんどん人を遠ざけている。
しかし本当は、人恋しくて仕方ない自分自身に、白河の合掌作り「結(ゆい)」の姿に気づかされた。

見附市 天徳寺 副住職 中野尚之 合掌