センス・オブ・ワンダー

平成十三年八月二十一日 加茂法話会

                              【法話の要旨】
 私たち人間は、20世紀を通して、人間が自然を克服し、人間の好きなようにして生きることが正しい生き方のように近代文明を発達させてきた。そのひずみが各所に出てきているのが現在の世の中ではないか。
 自然とともに生きる、すべてが関わりあって生きる世界を説かれたのが、お釈迦様であり、道元禅師だ。
 そして、科学者の中でいち早くそのことに気づき、警鐘を鳴らしてくれたのが、レイチェル・カーソンである。
 この度は、私自身が尾瀬へ行ったり、普段の生活の中で、自然と触れ合うとき、生きる喜びを大いに感じることがかけがえのないことであることをお話してみた。

一、 失った“本当のぜいたく”
吉田好美 会社員
 最近、季節感を感じなくなった。冷暖房完備で周りはビルばかりの所で毎日毎日、同じことをしているせいかもしれない。学生のころは暑い中、勉強したり遊んだり。そして、なによりもいろんな行事があった。行事で「ああ、夏がきたんだな」とか「冬だな」とか感じたものだ。それに祖母が作っている畑のようなものもない。友人と祭りに行ったりしているが、なんかパッとしない。
前は身近にあった自然が今では私の記憶の片隅にあるだけ。自然に囲まれて、自然のものを肌身で感じて、祖母の作った虫付きの野菜を食べていたことや学校行事に参加できたことが、ものすごくぜいたく だった、と今ごろになって思う。
 今のような一人で好き勝手ができて、自分の好きなものを買えて、すべて自由な生活にあこがれてやっと手に入れた。
 はたから見れば、今の方がずっとぜいたくだろう。子供のころ、私もそう思っていた。でも、違った。
 本当のぜいたくは子どものころの生活だった。
 それに今ごろ気づいた。

二、 尾瀬へ行って
 尾瀬は、ごみを出さないようにしているから、皆割りと汚さないんですよ。
  尾瀬ヶ原と人工のダムの対比

 

三、 人と自然と人工の一体化

私たちは自分と自分の周りの環境を分けて考えるが、これは決して分けることができないというのが仏教の縁起の教え。たとえば漁師さんが使う網これは一点をつまむと周りがぐうっとあがってくる。隣同士がつながっているのはわかるが、実は全体が網を上げるようにつながっている説くのが仏教の教え

 「一滴の中にも無量の仏国土を現成せり」  道元禅師

四、  「センスオブワンダー」レイチェル・カーソン著
子供たちの世界は、いつも生き生きとして
新鮮で美しく驚きと感激に満ち溢れています。
残念なことに私たちの多くは
大人になる前に
澄み切った洞察力や、
美しいもの、畏敬すべきものへの
直観力を鈍らせあるときは、
まったく失ってしまいます。
もしもわたしが
すべての子供の成長を見守る
善良な妖精に話しかける力を持っているとしたら、
世界中の子供に
生涯消えることのない
「センスオブワンダー
神秘や不思議さに目を見張る感性」を授けてほしいと
たのむでしょう。

                          東龍寺住職 渡辺宣昭 合掌