立春大吉と鎮防火燭について

平成十七年二月十八日 於加茂法話会


 立春は冬から春に季節が改まる日で、立春の前日に当る二月三・四日頃の節を分ける日をすなわち節分という。もともとは、立春、立夏、立秋、立冬の前日を指し、一年に四回あつたが、現在は大寒の終わる日、立春の前日だけを呼ぶようになった。昔は節分の日は邪気、疫鬼を追い払うため「福は内、鬼は外」【富久者有智 遠仁者疎道】 と呼びながら豆まきをする風習である。

 さて、豆を打ちつけられる鬼は赤鬼、青鬼、黒鬼とあります。赤鬼は、満面朱をおびて怒りにたける姿であり、欲の亡者となって血も涙も無い青鬼、そして、愚痴で人を疑い、嫉妬深い腹黒い人を黒鬼に喩えた者です。「福は内 鬼は外」と赤・青・黒の三匹の心の鬼を追い出して、清く正しく、美しい心でありたいと願わずにはおられません。

 鬼退治で有名なのは、桃太郎です。赤鬼をヤッケル犬、青鬼をヤッケル雉、黒鬼を退治する猿。

なぜ、そうなのでしょうか。怒りの気持ちを和らげる慈しみの動物は犬であり、欲の反対は施すことになります。雉は危険があると自分の命を捨てて我が子を守ります、勇気のある動物の象徴が雉です。さらに、愚痴の反対は正しい智慧です。だから、智慧のある動物の象徴は猿ということになります。このように、煩悩を仏教では通俗的に鬼と呼んでいます。節分の豆をよく噛み締めて、オトナの節(立春)に分けられた事を自覚して、幸福な人生を切り開くように、立春大吉のお札を貼り、外から、福が入ってくるようにと外から向って家の門柱の右に貼るのです。

鎮防火燭のお札は昔は三月の節日に貼るものでしたが、それは、南風が吹いて火をあおる火災を起こす火禍になる。不浄火とは、火虫のわいた火のことで火虫が飛びおどると不審火になるから火を汚すなという昔からの信仰がある。鎮火は水であるから、常にお札が水を呼んでいるという書き方をする。だから、火をいみて火の字を水の字のような書き方をする。鎮防火蜀は左に貼る。

 お札の貼り方は、立春大吉は右、鎮防火燭は左に貼る。家の内でも良いですが、仏壇の中に入れてある事を見ますが、できるだけ貼るようにしてください。   正寿寺住職 呉 定明合掌