般若心経(七回目)
                    平成十五年五月十五日 於加茂法話会

一、是諸法空相。不生不滅。不垢不淨。不増不減。

  ああ智慧深き舎利弗よ。その心ね(観行)によりて観よ。
  是諸法空相。この世全てのものは皆幻にして実体(かたち)がない。
           「縄と蛇」
  不生不滅。 鏡は物を写したから、消したからと云っても変わりはない。
          成・住・壞・空、泡と水、生かされている中に思惑がある。
  不垢不淨。 汚いものを写したら、鏡は汚くならない、また逆も同じである。
          善と悪。禪のあり方。淨不淨を超える。禪の生き方。
  不増不減。 山を写つしも鏡は重くならない。鳥の羽根を写しても鏡は軽くならない。
          水中の泡、損得感情で行動している。
  空のあり方。仏様の心、(曇り無き)鏡のこと。

二、是故空中。無色。無受想行識。無眼耳鼻舌身意。無色聲香味觸法。無眼界。

  乃至無意識界。

  かるが故に、おおいなる空の中には、色(すがた)なく、五官も想(おもい)も
  行(はからい)も識(こころ)もあるにあらざりき、

  眼(まなこ)耳も鼻舌も身(からだ)意(こころ)もあらずして、色(かたち)声
  もかぐわしき香もうまい味もなく觸(ふるる)法(のり)もあらざりき、眼に見え
  る世界無く耳・鼻・舌も身体をも 意識(こころ)もはたらく界(ところ)なし。

三、五蘊{色、受、想、行、識}十二処「眼耳などの器官と対象」を認識する働き{識}

  十八界
  五蘊 十二処      十八界(認識するところ)
  色・・眼・・色合い・・・眼識界
  受・・耳・・声、音・・・・耳識界
  想・・鼻・・香り・・・・・鼻識界
  行・・舌・・味わい・・・舌識界
  識・・身・・觸覚・・・・・身識界
     意・・法・・・・・・・意識界

四、洞山良价(とうざんりょうかい)807〜869年浙江省。霊墨について佛道修行。
  師匠について「般若心経」を読まれた。

  「眼も耳も鼻も舌も皮膚も意識もない」という所に来ると、にわかに手で顔をひね
  った。師匠に訪ねた。「私には、眼も耳も鼻も舌も、すべてそなわっています。な
  んでお経には、それが無いと云うのですか」師匠は驚き、ただものではない。霊墨
  の所で得度させた。雲巖禅師の所で悟りを開かれた。
   佛法を遠くに求めていた。だから、声を聞くことが出来なかった。
  有る時、おのれの影を見て悟った。外を探しているのでは、遠ざかるばかりである。
  わかってみると個々であることが、そのまま全で有る事。耳で聞くのではなく、眼
  に声が聞こえて、はじめてわかる。
  眼も耳も有るのになぜ、無いのか。

  本当の色とは、何か。信号の色の譬え。

  八十歳の人の感覚と自分の感覚。
                          正壽寺住職 呉 定明合掌