般若心経(五回目)
                  平成十五年一月二十二日 於加茂法話会

一、觀自在菩薩 行深般若波羅蜜多時 照見五蘊皆空 度一切苦厄 舎利子。

  聖なる觀自在菩薩、いと深き智慧波羅蜜多を行ぜられる。かんおん時に、「五
  蘊、皆空なり、」と照見し、一切の苦厄を解き給う。

二、舎利子 色不異空 空不異色 色即是空 空即是色 受想行識 亦復如是。

  ああ、智慧深き舎利子よ。色(すがた)は空に異(こと)ならず、色(すがた)
  は、即ちこれ空なり。空は即ち色(すがた)なり。五官も想いも行(はから
  い)も識(こころ)も亦また同じなり。

三、観音様が舎利弗(しゃりほつ)を前にいよいよ悟りの世界を語りはじめる。
  それは「色即是空 空即是色」の語句を含み、人間のあり方の根本的姿を示す。

四、色とは、地水火風の仮に和合している四大色身である。すなわち容(かたち)
  あるものを色という。容が有るからこそ色々見えて、迷うから色という。

  凡夫は迷って、空の本当の姿に背いて、そこに空の実体が本当に有るように、
  思って、生を好み、死を恐れ、色々の苦しみを受けて生死の輪廻をぬけられな
  い。
  仏はこれをあわれみ、この色身も元来不生不滅の真空が現れたるものであるか
  ら、色も空に異ならずと説くのである。

五、即というのは、やがてという心と訳す。色の本当の姿はそのままやがて空なり。
  空の本当の姿がそのまま色である。空を離れて色は有りえない。色を離れて空
  は無い。

  色と空は水と波の如し。波すなわち水なり。水すなわち波である。
  水と波、さらに二つあることなしではない。ただ一心実(いちしんじつ)であ
  る。

六、五蘊のうちの色蘊の一つをあげて、空と色は異ならない。後の残りの受・想・
  行・識の四蘊も、皆同じ事柄である。

  色は我々が、目に見える事の世界のすべてをいうのである。物質的存在のこと。
  絶えず移り変わりとどまることの無い性質をいう。

  受・・印象、想・・表象、行・・意志と行動、識・・意識のことである。

                       正壽寺住職 呉 定明 合掌