『般若心経』(三回目)  平成十四年九月十一日 於加茂法話会

一、觀自在菩薩。行深般若波羅蜜多時。照見五蘊皆空。度一切苦厄。
  せい                               ありありしもの
  聖なる觀自在菩薩、いと深き智慧波羅蜜多を行ぜらる。かんのん時に、「五蘊、
  みなくう    しょうけん   よろず  やく   たも
  皆空なり」と照見し、一切の苦厄を解き給う。

  自分の修行も他人の救済も自由自在に行ない得る仏のすぐれた観察の主人公。
  行とは教えを実践し菩提への道を自ら歩む、お釈迦様の教えを心の物差しとして、
  自分自身が観音様のように、ありとあらゆるものに執着せず、対立の無い見方を
  した時に、よろずの苦しみから開放される。

二、ダウン症の少女「よしこちゃん」が絵本作家に、

  「ちえおくれ」の子らのために、あなたの力をおかしください。『横谷静雄作』

  この子と共に死のうと 悶え苦しんだ日々、いじめられバカにされて泣く子を抱
  きしめ、夫と泣きあかした夜。
  私達はなぜこんな苦しまなければならないのか・・。
  おまえは何のために生まれてきたのか。きびしいこの中にやがて親なき後に
  この子はどうしていきていくのか。けれどもこの子らに何も罪はないのです。
  生まれた以上この子らも「人間」として生きる権利があるのです。
  「人間としての尊厳にふさわしい処遇を・・」訴えるすべを知らないこの子ら
  そして親の切ない願いを心として 私たちは世の人々にうったえたいのです。

三、岡本佳子 『仏の心』

  お母さんとたくさん、たくさん歩いた、円山八十八ケ所・・・。
  きのうも、きょうも、お天気たくさん「光」っていたよ。
  お日さまニコニコ笑っています。
  やさしいお顔「おじぞうさま」佳子は、困った人達を助けてくれる心のやさしい
  「人」が大好きです。神さまも仏さまもたくさん、たくさんたすけてくれるの。
  佳子は「仏の心」が大好です。

四、美しい心 やさしい心 つよい心 「佳子」ちゃんの好きな言葉。
  坂本九ちゃん詩作 どの花にも 草にも 一つの生。

  昭和四十六年十二月三十一日 札幌で生まれる。今年三十一歳になる。
  昭和四十七年七月 ダウン症(染色体異常により筋力、言語、知能、呼吸など全
  体的に発達が遅れる病気、千人に一人の難病)と診断され、三歳までの命。
  昭和四十八年十月(一歳十ヵ月) 札幌、円山公園、八十八体の地蔵様。
  「お母さんと一緒に天国へ行きましょうね」死を覚悟した久子さんを救ったのは、
  六十一目の母子地蔵だった。
   家族の励ましの中で、絵の才能を発揮し数々の絵画コンクールで受賞。
  平成九年九月九日 佳子二十五歳、坂本九ちゃんとの約束、小さな美術館オープ
  ン、(十三回忌)佳子たくさん頑張りました。名古屋からきんさん家族来日。
  平成十四年九月 札幌薬王寺の晋山授戒会で永平寺の宮崎奕保禅師(百二歳)様
  より、在家得度をして頂いく。

五、佳子ちゃんは、禅師様から仏様のお弟子にして頂き、物を見る目は、般若の美し
  い心、優しい心、強い心を自分のモノにし、絵は般若を表現する世界である。
   我々をとりまく一切の事柄は、その世界が本来持つ仏のとどまるところなき清
  らかな働きによって立ち、生かされていることを知らなければならない。
                          正壽寺住職 呉 定明合掌