夕方ちょっとね。

7月18日やっと仕事を片付け逢魔ヶ時から雲行き怪しい下田路を辿る。
目指すは、「おや?沢」だ。
ここは専門校生の時、尺岩魚が時々出た思い出の沢だ。

だいぶ変わったな・・・。
車を降りる、猛烈なアブはまだ居ない。
歩きやすい、いい感じだ。
ふと前方にチェーンが張ってある。
なんか釣りのノコギリが立ち入り禁止のチェーンに引っかかっていた。
最悪だ・・・。
別の場所に移動しよう。

どこがいいかな・・・・。
久しぶりに守門川に行くか。
十年前までは源流会で下田村の河川を足繁く通っていたのを思い出す・・・。
みんな若かった・・・。
今、自分自身が当時の会長の年になった。
偶然、源流会に出会い釣行を供にするようになり、そのまま会に入った。

そろそろ守門川に到着する。

逢魔ヶ時、辺りは一層不気味な様相を呈して来た。


逢魔ヶ時だけあって辺りは一層不気味な様相を呈して来た。
「キャッ!!」何かが叫ぶ!!
青い閃光が頭上をかすめ対岸の岩に吸い込まれた!!
「翡翠だ!!」
私を嘲るが如く凛と胸を張っている。
翡翠は話始めた。
「この渕は山女魚の溜まり場だよ。おまえの腕でも多少はつれるぜ!!」
私は思った「そんな事くらい先刻承知!この糞翡翠!!」
「おまえこそもっと静かに飛べってんだ!!」
「キャッ!!」翡翠は
大声をあげて消え去った・・・。

私は先程、翡翠の停まっていた辺りに近寄った。
そこには宝石のヒスイ色をした渕がゆったり悠久の時を伴なって流れていた。それはあたかも移り行く幻想を楽しんでいるかのようだ。
時同じく、水面に波紋が広がる。刹那ヒスイ色をした渕に銀色のキラメキが走る。宝石ヒスイがキャッツアイと言う新たなる宝石を生み出した。
その宝石から命の躍動が伝わって来る。
私のルアーロッドが満月の如く引き絞られ、ラインを通じて伝わって来る魚の躍動感に感動を覚えていた。
手元に寄せた魚はサファイア色のパールの宝石を身にまとって輝きを放っていた。

私の放った眩惑ルアーに猛然と襲いかかったのだった。

少し釣り上がることにした。ポイントからは確実に渓流の女王が挨拶に出て来る。
いっそう辺りも薄暗くなって来た。
今日はもう釣りをやめて上がる事にしよう。
私は土手へ上がる路をさがした。近くに道路工事の飯場がある。
私はその路を辿った。飯場の軒先に大きな鬼蜘蛛が獲物を狙って結界を張り巡らしている所だった。
こんな大きな鬼蜘蛛など見たことが無い。
まさか人を獲って喰って居るのではあるまいな・・・?

鬼蜘蛛が結界を張り巡らしている所だった。

そう思いつつ、私は一歩足を踏み出した。
瞬間鬼蜘蛛の結界に捕らえられた様な気がした。
すると、「おまえ、何しに来たのじゃぁ!!」
それは鬼蜘蛛だった!!こちらを六つのルビーの様な眼が見据えて光っている。
刹那、右へ跳んだ!頬を捕縛糸がかすめる。
瞬間眼が眩んだ。
いつしか土手の上で一人たたずんでいた。
遠くで雷鳴が轟いた・・・・。




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