リッジで上がりたい

 高高度飛行をするようになったらまず目指したいのがリッジソアリングです。風さえ良ければほとんどの人がソアリングできますが、気流が荒れていたり風速が強ければ練習生にはストップがかかります。それはもちろん使用する機体の絶対的な性能もありますが、それより大きいのは技術と知識が不足していると判断されるからです。自由なソアリングのためにはしっかりとした技術と、機体や気流に関する知識を身に付けないといけません。自分の力で安全に飛ぶために必要な事柄をいくつか挙げてみます。

●直進
 穏やかな大気の中では何もしなくて良いほど安定している機体も、気流が荒れている場合は四六時中揺れて、真っ直ぐ飛ぶだけでも常に修正が必要になります。しかし全ての揺れに対して過敏に修正を加える必要はありません。揺れには、明らかに機体を傾けようとする大きな成分もあれば、結果的に機体の姿勢を変化させずに揺さぶるだけの細かな成分もあります。慣れてくるとその境目の判断ができてくると思います。姿勢に影響を及ぼさない程度の揺れは修正せずに機体まかせにできます。バーから力を抜き、腕全体の力も抜いて、細かな機体の揺れは腕の中で遊ばせてやるような感覚です。すると、荒れていてもわりと落ち着いて飛べるようになり、修正動作が楽になってきます。全体として明らかに機体が傾くと思える力を感じた時だけ腕に力を入れて修正すれば良いのです。これは何回も飛んでいるうちにわかってくるでしょう。

 気流が荒れている場合、ニュートラルスピードで飛ぶのは危険です。突然の失速を避けるため、左右に機敏に修正できるようにするために、少し速度を増して飛ぶようにしましょう。そして荒れている時は機体の揺らされ方も強烈ですから、穏やかな時のようなじんわり傾けるような体重移動では後手後手になります。修正をする時は揺れの大きさに応じた移動量で即座にガツンとしっかり腰を振って操作しましょう。肩コントロールのクセがある人はとにかく早く矯正してください。大事な時にまったく機体を制御できない状態になってしまいます。

 安定したリッジ風の中では普段通りのコントロールでも良いでしょうが、いざという時には瞬時に身体が横を向くくらい急激な体重移動も出来るように気持ちの準備はしておきましょう。

●失速
 失速を経験しておく事はとても重要です。ある程度自由に飛べるようになったらなるべく早いうちに失速を試して、その時の感覚、操作に慣れておくべきです。どのくらい押し出したら失速するのか、失速の前後で機体はどんな動きをするのか、どうすれば早く回復できるか、回復のためにどのくらい時間と高度をロスするのか、それらが感覚的にわかっていれば自信を持って失速寸前の速度域でも失速させずに機体をコントロールでき、結局それが安全につながります。

 失速とは迎角を大きくしすぎて翼上面の気流が渦を巻く乱流になって揚力を失う状態です。揚力を失って機体とパイロットの重量を支えきれない状態になると、機体はノーズからがくんと落ち込みます。回復するには早く対気速度をつけることです。また機体のロール操作は翼に揚力があってはじめて効くものですから失速中はコントロールはほとんど効かなくなります。これらはとにかく経験して覚えましょう。

●スピードレンジ
 自分が出せるスピードの幅を広げる事も安全なリッジソアリングのために大事です。失速の練習と同時期に速度を出す練習もしましょう。機体の性能や体重との兼ね合いで実際に出せるスピードは制限されますが、本当にその限界までスピードを出すには慣れが必要です。初級機では60km/h前後まで出せると思いますが、そこまで出すためにバーを引き込むのはかなり力が要ります。ひとつ言えるのは、中途半端に引き込んだ状態を保つよりは、腕を完全に伸ばし切って腰近くに固定する状態、つまりフルロックの状態で飛ぶ方がずっと楽です。引き込む時のバープレッシャーの強さと身体に受ける風圧で怖い感じがするかもしれませんが、速度自体は車で走るより遅いのですし機体の安全性にはまず問題ありませんから、ある程度速度を出すことに慣れてきたら思い切ってフルロックまで加速してみましょう。

 ただ、減速する時は急激にバーを戻さないように、ゆっくり滑らかに減速しましょう。瞬時にバーをもどしたら初級機といえども簡単に真上を向いて、へたをすればひっくり返ってしまいます。ゆっくり減速する他に、バンクをかけて旋回に入りながら減速するのも安全な方法です。また加速していくとヨーイングが発生することがあります。とりあえず減速すればヨーイングはすぐに収まりますが、対処法は別ページに書いていますのでそちらを見てください。

 弱い風の中で上がるためには速度を落として沈下を最小にする必要があります。強い風の中でソアリングするには高速で飛び続けられる必要があります。ですから低速でも高速でも機体を自由に操れることが、リッジソアリングのための第一条件です。

●偏流飛行
 風が吹いていると、機体の向きと実際に進む方向は当然ズレます。結果的に機体が自分の思った通りの方向へ進んでいる場合それを「偏流飛行」と言い、風下へずれて、行きたい方向へ行けていない場合、それは「流されている」と言います。要するに自分が行きたい方向にちゃんと進むようにノーズの向きを調整しなければいけないということです。

 それよりも空中で自分が実際に進んでいる方向を正確に判断できることが重要です。一定のピッチで飛んで顔を固定して前方を中心に周りを良く見て、景色の動きから進行方向を見定める練習をしましょう。空間のどの方向に進んでいるか、左右だけでなく上下の方向も含めた進行方向を景色から判断できるように努力します。地面が近い場合は進んでいる方向は簡単にわかりますが、地面が離れるほど分かりにくくなります。少しでも正確に判断できるように練習しましょう。感覚を磨く訓練です。これらはあまり話し合われないことですが大事な訓練だと思います。

 最初はそれほど細かな判断は必要ないかもしれません。でも飛び続けながら、精度を増していくようにするべきです。それは着陸前のグライドパスの見極めにも通じ、フライト全体にも関わってきます。また、より性能の高い機体に安全に乗り換えるためにも、そういった感覚は必要になります。

●風の中での旋回
 風の中で旋回すると当然風下方向に流されます。流される距離は意外と大きいものです。毎秒5mの風の中で10秒かかって360度旋回すれば、単純計算でも50m流されることになり、風下方向に十分な空間がないと危険です。ですからリッジソアリングにおいては常に風上方向を向いたままの8の字旋回を基本とします。

 8の字といっても、リッジソアリング中のように風がある場合は大気に対して実質スラロームのような軌道になるので楽なものですが、それにしても風が荒れている場合は自分の決めたバンク角を保つようにしっかりとコントロールしないといけません。風にあおられるままにフラフラとバンクを変えていたら、思った通りのコースは飛べません。直進時に左右の水平を保つために努力するのと同じように、旋回中も自分の決めたバンクを保つ努力が必要です。

 そして斜面に近づくときは、必ずいつでも谷側へ逃げられる準備をして近づくこと。つまり谷側へ少しバンクをつけた状態で、いつでもそのバンクを深くできるように身体を少し谷側へ寄せてゆるやかにカーブしながら斜面に近づくことです。

 またあまりにギリギリに林に近づいてはいけません。たとえ安定したリッジ風であっても木の近くでは風が死にます。すると木に近い方の翼が揚力を失い、吸い寄せられるようにそちらへ傾くことになります。ハングしか乗らない人はまずそんなに近づこうとはしないと思いますが、パラにも乗る人は平気で近づくことがあるようです。ハングとパラでは身体と翼の位置関係が全然ちがいます。同じ調子で近づかないように注意してください。

●追い風失速?
 風上を向いた状態から風下方向へ旋回を始めると、対地速度が突然速くなるため錯覚を起こして大事な対気速度を無視した旋回をして、失速してしまうことがあります。ハングではこのことを追い風失速と表現することがあるようですが、要するにこれは錯覚による失敗です。地面の流れる速さに惑わされず、普段と同じように風を感じ機体の反応を感じ取りながら、しっかりと対気速度を保った旋回をしましょう。

 風の中ではゆっくりとした旋回ほど大きく流されます。ランディング前の高度処理の時などで、どのくらい流されるかを経験しておいてください。当然ながら、流されないためには機体が風下を向いている時間を短くすることがポイントです。小さく速い急旋回の必要性が実感できるでしょう。

●急旋回
 風に流されないためだけでなく、予想以上に障害物に近づいた場合、十分なスペースが無い空間で旋回しなければいけない場合、小さく回る急旋回は必要です。

 基本としてハイバンクの180度旋回を練習しましょう。バンクの深い旋回は直進時より揚力が必要ですから、飛行速度も少し速くなります。初速をつけてしっかりバンクをかけてスパッと旋回します。そこから発展して、一定したハイバンクの連続旋回や、ハイバンクから反対のハイバンクへ一気に切り返す、連続したS字旋回も練習しておきましょう。

 しかし本当に突然障害物に気づいた時は、加速する余裕はありません。そんなときは速度が足りなくてもバンクをかけ、バーを押し出してフレア気味にターンして、とにかく前方の障害物をかわすことも必要でしょう。その後は失速に近くなりますから、すぐにバンクを戻しながらバーを引き込んで速度を回復しないといけません。そういった旋回も安全な空間で練習しておくべきです。

 また上方の雲から逃げるためや、早くランディングしたい場合の高度を落とすための連続旋回、いわゆるスパイラル降下も練習しておきましょう。スパイラルはハイバンクの連続旋回ですが、高度を落とすための旋回ですから、バーを引き込んで必要以上に速度をつけた状態を維持して旋回します。かなりのバープレッシャーがあり速度もかなり出ますので恐怖感もあるかもしれませんが、非常時のためにある程度慣れておかないといけません。

 そして全ての旋回において自分の通るコースを観察し、高度ロスも含めてどのくらいのスペースで旋回できるのかを感覚的に覚えていくことが大事です。自分の通るコースが予測できれば限られた空間でも迷わず旋回でき、それが安全につながります。

 また旋回に限らず、自分が今どんな場所を飛んでいるのか、近くに他の機体がいないかを常に意識していないといけません。特に連続した旋回の練習をしている時などは、つい自分の事だけに集中しすぎて周囲の状況の観察を忘れがちです。ふと気がつくと風に流されて危険な場所にいた、他の機体が目の前に来ていたなどという事がないように、集中力を配分しながら飛ぶことも安全のために重要であることを頭にいれておいてください。

●ポーラーカーブ
 滑空比が10の機体は大気に対して10メートル前進するごとに1メートルの割合で沈下します。もしもその機体がどんな速度で飛んでも滑空比10を維持して飛べれば素晴らしいのですが、現実には同じ機体でも飛ぶ速度によって滑空比は変わります。毎秒なんメートルで飛ぶと毎秒なんメートル沈下するかをグラフにすると、滑らかな曲線になって表され、それがその機体固有の飛行性能を示すポーラーカーブになります。

 正確に自分の機体のポーラーカーブを求めるのは困難ですが、カーブの形状は一般的に決まった特徴があり、そこから様々な状況下での安全で効率的なフライトのための多くの事柄が定性的に読みとれます。上昇風の中を飛ぶ場合、向かい風が強い場合、追い風で飛ぶ場合、平行風や下降気流につかまった場合、どのように飛ぶべきかが判断できます。考え方がやや複雑になりますが、さらにポーラーカーブを360度回転して立体的に考えれば、偏流飛行での効率的な飛び方もわかることでしょう。

 そしていつか競技に参加して、より速く飛ぶ事を考えるようになった時、自分の機体の正確なポーラーカーブが重要になってきます。ここでは詳しく触れませんが、ポーラーカーブについては書籍等で調べて、ひととおり理解しておきましょう。
こちらに、ある上級機のポーラーカーブのデータがあります。)

●気流の判断
 自分が関わる空域の気流の状態は天候や地形を元に常に想像しながら飛ばなければいけませんが、リッジソアリングでは周囲の地形や障害物によって、風がどのように流れているかを想像することが特に重要になります。

 でこぼこのない滑らかな斜面に風が吹き付ける状態ひとつをとっても、斜面に正対して吹く風と斜めに吹いてくる風では上昇成分がちがってきます。正対する風であっても、急斜面であればその麓の部分では風が渦を巻いているかもしれません。斜面の裏側では当然ローターがあるものと思うべきですが、風の強さでその程度も変わってくるでしょう。独立した山の両脇ではベンチュリ効果により全体の風速より速く上昇成分の少ない平行風が流れ、頂上付近では上昇成分も大きいですが風速も速くなります。また障害物の後流はカルマン渦のように同じ場所でも時間的にも変化します。

 空気の流れの基本はそういった現象の積み重ねでしょうが、自然の地形はとても複雑で、単純な現象の積み重ねだけでは理解できない事がたくさんあります。そして天候によってそこにサーマルの影響が加わり、さらに高度によって風向きが違う層があったりしますから、自然を完全に理解するのは不可能ですが、それでも少しでも知識を増やし、経験を重ね、自分にとっての安全な領域を広げていかないといけません。空を飛ぶ者にとってこれだけは終わりのない課題であり、自然をいかに正確に把握できるか、それが上達ということでもあります。

●雨
 初級機のように水を吸い込むセールを使用している機体は大丈夫なのですが、中上級機で、全面またはリーディングエッジ部分に水をはじくタイプのセールを使っている機体では雨には十分に注意してください。表面に付いた雨粒のために気流が剥離して揚力が激減し、ノーズも激しく落ち込み、どんどん沈みます。これは経験してみないとわからないのですが、かなり怖いです。

 飛びながらの対処としては、付着した雨粒を吹き飛ばすために目いっぱい速度を出す、バーを激しく揺さぶるなどが考えられますが、降り続く雨の中ではほとんど無意味ですし、実際の効果もどれだけ期待できるか判らないところです。

 ですので雨からは出来る限り逃げること。逃げられないと判断したら一刻も早くランディング場所の近くへ急ぐことです。

 また雨上がりでテイクオフする場合は、機体に付いた雨粒はしっかり拭き取りましょう。雨粒がついたまま飛び出したらスタ沈必至です。

●テイクオフ前の準備
 普段あなたはプレフライトチェックを行っているでしょうか。これはクセにしないといけません。

 機体のセットアップにしてもそうですが、一連の作業をいつも決まった順番で行うようにし、それをクセにしましょう。いつも同じ事をすることで、なにか異常があった場合にすぐ気付くことができます。

 そしてそのクセの中にプレフライトチェックも入れてください。フライト直前のチェックは大事です。完璧にセットアップしていても、誰かが機体を移動する時にあなたのバテン止めロープを引っ掛けてはずしていくこともあるのです。その他にあった事例では、ラフラインを全然掛けていなかった(スタ沈)、ラフラインとリアワイヤーが絡んでいた(山沈)、ノーズコーンをぶら下げたまま飛んだ(性能アップ?)、スピードバーが前後逆でブレーキバーになっていた(ランチャーに上がって気付いた)、ハーネス内のレッグベルトをかけ忘れた(ランディングで身体が落ちそうになった)、カラビナを掛け忘れた(死亡)などがあります。(すべて弥彦で実際にあった事例です)

 また無線機もしっかり準備しましょう。ずっと飛び続けるなら4級アマチュア無線免許を取得しておく必要があります。空中でも良く聞こえ、自分でも飛びながら喋られる装備をしましょう。飛びながらの情報交換は飛ぶ前の情報よりも重要です。

 アマチュア無線機での交信は法規的に余計なおしゃべりは出来ないことになっていますので、飛行中の情報交換は、自分の位置、移動状況、気象の状況、送受信の状況などを主内容として交信しましょう。

●テイクオフ
 適度なリッジ風が入っているときは、普段より簡単に機体が浮きます。1歩走っただけで身体が浮いてしまうようなことも経験するでしょう。しかしテイクオフでは、しっかり対気速度をつけて早く地面を離れて安全な空間に進むことが重要です。風のためにその場で浮いてしまうというのは、ものすごく無防備で危険な状況であることを認識してください。地面はまだすぐそこにあり、対気速度も不十分です。そこでバーをニュートラルに合わせたりしたら、ちょっとした気流の乱れで、簡単に姿勢を崩して地面に接触してしまいます。機体がすぐ浮き上がりそうな時は、普段よりさらにバーを引き込んで安全な速度をつけ、一刻も早く地面から遠ざかるように前進しなければいけません。風が強いのだから地面近くは荒れているのです。飛ぶ前から普段より慎重にコントロールしないといけません。

 基本的に風が無いときはノーズを上げて、風が強いほどノーズを下げて走り出すように心がけましょう。これについて逆の事を言う人がいますが、自分は実際そのようにしています。少なくとも「風が強い時はノーズを上げて出ろ」とは誰も言わないでしょう。

●緊急事態
 慎重に飛んでいても予測できない事態はあり得ます。どうしてもランディングに届かない、前に進めない、尾根を超えられない、機体が破損した、そんな時は山沈場所を探すか、エマージェンシパラシュートを投げるか、いずれにしても早い時期に心を決めて少しでも安全と思える方法を選択しましょう。

山沈の場合、地面が出ている場所よりも林に降りる方が絶対に安全です。うまくすれば体もグライダーもほとんど無傷で回収できます。まわりの人に迷惑をかけないよう、なるべく平らな場所などとは思わないで、自分の安全を最優先するほうが、多くの場合良い結果になります。ただし杉林は極力避けて他の雑木林を目指しましょう。杉林は背が高く、下のほうは枝が無いため危険度大です。降りる林を選ぶためにも山沈を覚悟したら早いうちに進む方向を考えないといけません。

弥彦山の頂上付近などで風速が速く前へ進めなくなり、裏へ飛ばされるのを覚悟したなら、ローターを避けるためなるべく高度を稼ぎながら山を離れるようにしましょう。弥彦の場合裏は田んぼが広がっていますから、山から遠くへ逃げたほうが安全です。場合によっては高度を上げることで風速が弱まり、前進できることもあります。

ランディングに届かず他の平地に降りる場合は、風上の林や建物などの障害物に十分注意してください。最後の最後に風が死に、失速することがあり危険です。なるべく風をさえぎる物がない場所、障害物からなるべく離れた場所を選んで、向かい風でゆっくり降りている状態で安心せずに最後のアプローチは十分すぎるほどの加速をして地面に近づくようにしましょう。ランディング直前、もう脚を出そうというタイミングからが最も危険であることを良く覚えておいてください。







 思いつくままに書き連ねてかなり長くなりましたが、安全に飛ぶために全て必要な事ですから気に留めておいてください。

 ハンググライダーは無茶なことをしなければ総じてとても安全なスポーツだと思います。黎明期のハングはまさにアドベンチャーでした。しかし機体の性能は比較にならないほど良くなり、世界中のフライヤーが情報をリアルタイムで共有しあって飛行技術も確立され、ハングの講習は今や自動車学校を卒業して公道の流れに乗るのと同じように、システマチックになってきています。しかし空にはガードレールや標識はありません。また同じ場所でも短時間で状況は変化します。飛びながら天候、気流を考えて危険な場所を避け、さらに自分の機体の性能とそれを操る技術に照らし合わせて常に変化に対処して安全を確保しなければいけません。これは人任せにはできないのです。状況判断をすべて人任せにして絶対安全と思える時にしか飛ばないなら、あなたの上達は永遠に止まってしまいます。付け加えて言えば、状況判断を人任せにするということは、危険なことをすべて他人に押し付けるということです。ですからシステマチックとさえ思える現在であっても、基本的にはハングはアドベンチャーであると認識し、常にそのアドベンチャーの精神を忘れずに飛んでほしいと思います。どんなに安全だと思っていても状況はいつ変わるかわからない。本当のアドベンチャーが突然始まるかもしれません。その時に技術、知識が不足していれば大きく危険が迫ります。そのために普段から自分の腕を磨き、人の経験談を聞いて知識を増やさなければいけません。いざという時にその知識が本当に活かせるように、想像を膨らませるのも大事かもしれません。そうして順調に上達していけば、よほどひどい風でなければあなたも上級者に混じってソアリングができるようになるはずです。

2007/05

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