これはそこで見つけた「プラスチックの墨壺」そういえば覚えがある、子供の頃、父が「大変なことになった」と持ってきたのがこれだった。写真を見てもらえればわかるが、木でできた墨壺をそのまま型としてプラスチックで作った模造品だ。いくら高度経済成長時代とはいえ、これはないだろう。
当時は業界あげて大騒ぎとなった。（小さいながらも「墨壺業界」というものがあった）しかも、作った会社は同じ町にある会社。県外のよそ町や、外国製ならともかく同じ町でやるか、普通。
あたりまえだが、木製墨壺とは比較にならないほどのコストダウンが出来て、いまでいうなら「価格破壊」だ。新しく大工さんになるような人はみんなこの墨壺を使う。そして木製墨壺の需要はどんどん落ち込んでゆく。
木製墨壺とちがって「軽く」「割れない」というプラスチックのごく当たり前の性質が受けたのか、爆発的なヒットを続けるこの製品を尻目に古くからの墨壺業者は次々と転職転業をしていった。その後より便利な「巻き尺型墨壺」が発売されるまでそれは変わることはなかった。もっともどちらが売れようと墨壺業界は自然消滅。のこったのは個人で作っておられる方のみ。
そして、会社丸ごと業種転換したところもあった。（坪源しかり、ね。）現在、業種転換で成功して家具製作会社になったところや、デコイつくって訳わかんなくなっているところ（うちだ！うち）などいろいろですが、なかなかみなさん、しぶとく生き残っているようです。
実は最近、売れているんですよ......坪源の木製墨壺。月に数個という微々たる数ではありますが.....今作っていられる方々がいなくなったら、もう誰もつくれないものだと、ようやく気が付かれたようですね。もちろん後継者は誰もいません。
さて、あなたの町の古道具やさんをちょっとのぞいてみてください。案外売っていたりしますよ、墨壺。ちょっと私からすると出来のわりにとんでもない値段が付いていますが.....
