思い出 の 味

                  平成十四年九月十一日  加茂法話会

 

一、私は胡瓜が大好きです・・・なぜきゅりがこんなに好きなのか考えてみました。

    母の生家は農業を営んでおります。子供の頃、夏に遊びに行くと畑に実ったまだ若い胡瓜を好きなだけ採って食べさせてもらったのです。

 

二、今年のお盆、懐かしい胡瓜の味に再会しました。

仏さまにお供えする野菜を母の生家から山ほど頂いてきたのです。私はその中から輪っかのように曲がった小さな胡瓜を一本手に取り、冷水で洗ってそのままガブリといただきました。

 

三、懐かしい味が口の中に広がり、と同時に子供の頃の思い出が顔を  出しました。   

    母の自転車に乗せられ川沿いを走り母の生家に連れて行ってもらったこと。(とても印象に残っている光景です)従兄弟達と遊んだこと。亡くなった祖母が私にだけいつも優しかった事・・等々

 

四、皆さんも「あれ、又食べたい。」と言う思い出の味がありませんか?

    私が食べた胡瓜の味は、今年七十歳になる叔母(母の姉)も知っていました。「畑から採ってきたら干してある梅干しと一緒に食べるのが一番・・見つからなければ。」と聞かされました。

 

五、私たちの何気ない日常生活の中にとけ込んでいる味、匂い、音、といった日々の暮らしの中にこそ、心を育む種があることに気付かされた思い出いっぱいの胡瓜の味でした。

 

六、私たち仏教徒の生活は、たとえ小さな事でもお釈迦様のお気付きになられた真理を日常生活に取り入れてこそ、胡瓜の味のように私たちの身になるのです。《仏教的価値観を取り入れた生活》

     

 来年の夏は五歳になる娘を自転車に乗せて胡瓜採りに行きます。きっと楽しい報告が出来るはずです。お楽しみに。

                       

                 見附市天徳寺 中野尚之 合掌