罪は消えるか消えないか

加茂法話会 平成十九年七月二十日

 

一、「わたしはドロボーをしました。もうしません。先生ゆるしてください。」 村井安子

 

二、「安子ちゃん、ほんとのことを書かなあかんな」    灰谷健次郎

『盗みをしたことを告げるのが、ほんとうのことではない。ほんとうのことというのは、盗みをはたらいた自分をしっかりと見つめることだ。』

 

三、  チューインガム一つ      三年 村井安子

 せんせい おこらんとって せんせい おこらんとってね

 わたし ものすごくわるいことした

わたし おみせやさんの チューインガムとってん

 一年生の子とふたりで チューインガムとってしもてん

 すぐ みつかってしもた

 きっと かみさん(神様)が おばさんにしらせたんや

 わたし ものもいわれへん

 からだが おもちゃみたいに カタカタふるえるねん

 わたしが一年生の子に 「とり」いうてん

 一年生の子が 「あんたもとり」いうたけど

 わたしはみつかったらいややから いややいうた

一年生の子がとった

でも わたしがわるい その子の百ばいも千ばいもわるい

わるい わるい わるい わたちがわるい

おかあちゃんに みつからへんとおもとったのに

やっぱり すぐ みつかった

あんなこわいおかあちゃんのかお 見たことない

あんなかなしそうなおかあさんのかお 見たことない

 しぬくらいたたかれて

 「こんな子 うちの子とちがう 出ていき」

 おかあちゃんはなきながら そないいうねん

わたし ひとりで出ていってん

 いつでもいくこうえんへにいったら よその国へいったみたいな気がしたよ せんせい

 どこかへ いってしまお とおもた

 でも なんぼあるいても どこへもいくとこあらへん

 なんぼ かんがえても あしばっかりふるえて なんにも かんがえられへん

おそうに うちへかえって さかなみたいにおかあちゃんにあやまってん

 けど おかあちゃんは わたしのかおを見て ないてばかりいる

 わたしは どうして あんなわるいことしてんやろ

 もう二日もたっているのに おかあちゃんは まだ さみしそうにないている

 せんせい どないしょう

 

四、「かの三時の悪業報かならず感ずべしといへども、懺悔するが如きは重きを転じて軽受せしむ」

 わるいことをすれば、永久にその罪は消えない。懺悔することによって悪の行為が重いものから軽いものになり、ついには悪業を犯すことがなくなることを示している。

 

東龍寺住職 渡辺宣昭 合掌