仏の教えを支えとして、今ここを生きる

平成十八年九月十七日 加茂法話会

一、甲子園高校野球決勝。駒大苫小牧と早実。

二十日 延長15回、1対1の引き分け。田中と斉藤の見応えのある投げ合い。

二十一日 4対3で、早実が、88回目で初優勝。監督「88年の重みが優勝させてくれた。」

「ハンカチ王子 早稲田実業・斉藤祐樹投手」と「駒大苫小牧 田中将大投手」 人気沸騰

 

二、八月二十二日 日報抄から

▼死力を尽くした早実と駒大苫小牧の選手の姿は、脳裏から決して消えないだろう。「球史に残る」とはそういうことだと、一九六九年の松山商と三沢の決勝引き分け再試合に思う。三十七年が過ぎた今も、伝説となった場面や選手を熱く語る人が多い

 

▼五十代になったかつての栄光の球児は、昨日の閉会式で早実と駒大苫小牧の選手に贈られた言葉を聞いただろうか。「次の人生に向かって、力強く前に出てください」。甲子園には魔物がすむというが、実社会も同じである

 

▼リリーフで松山商の優勝に貢献した中村哲さんは、社会人野球の有力チームに入ったものの交通事故で夢を絶たれた。ノンフィクション作家田沢拓也さんの「『延長十八回』終わらず」を読むと、逆境の中で甲子園体験を支えに生きる元選手に胸を打たれる

 

▼三沢の高田邦彦元選手は小さな会社で働きながら、少年野球を指導した。自主性を尊重した高田さんは、打席に向かう子どもにささやいた。「耳をすませ。髪の毛から足の先まで全部お前の味方だ。やればできる」。自分に言い聞かせ続けた言葉でもあった

 

▼野球で傷めた体を治すために、大手企業を辞めて姿勢保健均整師の専門学校で学んだ松山商の西本正夫元選手の言葉も印象的だ。「野球でも健康でも、勝つためには自分にゆとりを与えることが大切。ゆとりを持つには、練習(や勉強)を楽しむことです」。実社会で試練に立ち向かうとき、早実や駒大苫小牧の選手はどんな言葉を残すだろうか。

三、七月末に、横浜で、檀家の葬儀があり、弟子の高橋道昭兄に、久しぶりに会う。

悩みながらも、今お世話になっている方丈様のご指導を頂き、僧侶を続けている事に安堵。

本人も私に会えたことを素直に喜んでいた。

四、また見んと おもひし時の 秋だにも 今宵の月に ねられやはする     道元禅師

 

五、当に知るべし、是の処は即ち是れ道場にして、諸仏は是(ここ)に於いて阿耨多羅三藐三菩提(あのくたらさんみゃくさんぼだい)を得、諸仏は此に於いて法輪を転じ、諸仏は此に於いて般涅槃(はつねはん)す。                  『法華経』「如来神力品」

 

東龍寺住職 渡辺宣昭 合掌