鎖子(さす)について

平成二十二年六月二十七日 於加茂法話会

大夜(たいや)念誦(ねんじゅ) ・・・お通夜の行事、お経が終ってからお釈迦様から亡き方丈様まで、代々の和尚様のお名前をお唱えし礼拝する法要。          

通夜(つや)説教(せっきょう)・・・お通夜に際しまして、お説教をいたします。 

佛事師五鏧(ぶつじしごけい)三拝(さんぱい)・本葬儀をお勤めいただく佛事師様が本堂にお参りされます。

鎖龕佛事(さがんぶつじ)・・・亡き方丈様のお龕を固く鎖す法要。

起龕佛事(きがんぶつじ)・・・亡き方丈様のお龕を本葬会場の本堂にお移しする法要。

(すい)    (そう)・・・亡き方丈様を有縁の方々が行列を組んで須彌壇に安置します。

鼓鈸三通(くはつさんつう)・弔 辞・弔電奉読

奠湯佛事(てんとうぶつじ)・・・お旅立ちに当たり甘い蜜湯を差し上げる法要。

奠茶佛事(てんちゃぶつじ)・・・お旅立ちに当たり香り高いお茶をすすめる法要。

秉炬佛事(ひんこぶつじ)・・・松明を回してお龕を火葬にふし、方丈様の勝れたあとかたを

 

釘打…親類との最後の別れが行われる。棺には、故人が生前愛用してた品や花などを入れることが多い。納棺が終わり釘打ちになる。棺の蓋の釘打ち。遺族が頭のほうから小石で順番に打つ。回数には地域差がある。小石は三途の川の石という。石の呪力による霊魂の封じ込めともいわれる。◆回数は2回から3回 

 

鎖子(さす)とざす。「錠」かぎをかける。ぴったりとしめて開けない。盆袱に盛れる鎖子を行者が鎖龕師に呈渡する。この作法は中国清規には記されていない「諸回向清規」1565撰に始めて記されている。

正與麼の時山僧 銀鑰(ぎんやく)(かぎ)()げて(きん)(かん)(とざ)す 末後の一句

御錠(みぢょう)御匙(みひ)

御錠は俗に錠前ともいう。戸締りをする用具である。御錠の構造には様々あるが、代表的なものとしては、海老錠、船底錠、箱錠などがあり、これらは何れも二つの部分から出来ている。即ち、一方を鎖(胴、女錠、鎖筒、鎖管、櫃)他方を鑰(差、男錠、鎖鍵、鎖子、バネ)という。要するに銅鉄製の筒(胴・女綻)があって・その筒の横にある狭い穴から、弾機(ばね)になっている差(男錠)を差入れると、中でバネが広がって、外に出なくなる。即ち錠が下りたということになる。

この御錠を解く用具が「御匙」であって、筒の下部にある小穴から入れて.バネに引っかけてこれを絞り、差を抜き出すものである。

 

鍵と錠「かぎとじょう」 鍵や錠は実用面だけではなく精神面でもその能力を発揮している。その機能は、心を閉じたり、開いたりすることにも通じている。そこから、人間の心=魂と深い関係する呪力を持つと考えられるようになったのである。江戸時代の絵馬を見ると、鍵や錠に人々の精神面が分かる。たとえば、サイコロに鍵と花札はバクチ封じ、「心に錠」「女に錠」で浮気封じ、「盃に錠」禁酒、「煙管に錠」禁煙など。心に固く誓を立てて祈願のシンボルとして使われた。悪心は心の隙間から入ってくる。だから、隙間を閉じておこうと祈願する人の気持ちであるが、それを託す鍵や錠には、人の心に悪心を起こさせる悪霊の侵入を防ぐ力があるとされる。「鍵取・かぎとり」という役目は、庫蔵の鍵を預かって宝物や武器、食料などの管理をする。鍵と錠は、まよけ、悪心にならない事と霊の封じ、富を守る役目がある呪術的道具である。

正壽寺住職 呉 定明九拝