Daytime Attack





それは急な出来事だった。時間帯は昼休み。
彼女、白長谷小夜子は突然、携帯電話を手繰り始めた。

その理由、『あの時』の真相を確かめるため。
つい先日、彼女を標的ターゲットとした爆殺未遂事件が発生した。

その事件は、鳴海歩とアイズ・ラザフォードの両者が、事件の首謀者であるハンターと対決した。
2人は爆弾のありかを突き止め、小夜子をそこから遠ざけようとした。

だが、ここで因果は狂った。 とある人物が、爆弾をただの目覚し時計とすりかえたのである。

誰が何のためにそんな事をしたのかは不明。
しかし、死人が出なかったのは幸いである。

しかし、白長谷小夜子はどうしても知りたかった。
あの時、自分に電話をかけてきた人物。あれが一体誰なのか、どうしても知りたかった。


小夜子はわざわざ屋上に赴いていた。
彼女のクラスメートは、小夜子が屋上に行くなんて、珍しいとも言っていた。

普段彼女は教室の中で読書をする人間だから。
外で遊ぶタイプでもない。どちらかといえば、紅茶片手に本でも読んでいる方がよっぽど似合う。

けれど、今日は違った。
いつものような彼女ではない。何かに惹かれるかのように、彼女の足は屋上へと向かって行った。



小夜子は、携帯電話の着信履歴を見ていた。
随分と、慣れた手付きでボタンを操作する。

(…あった)

現在の携帯電話は、1回着信した相手の電話番号を確認する事ができる。
脅迫電話やいたずら電話や詐欺事件が多発する今日こんにち。通話手段においても、セキュリティーというのは大切である。


彼女はそこにリダイヤルをかけた。
電話のコール音が鳴り響く。1回、2回、3回と。次第に彼女の心臓の鼓動が鳴り響く。

『………もしもし?』

繋がった。奇跡的だと小夜子は思った。
多分、番号を変えているか、あるいは機種を変えているかと思っていた。
通話ができて良かったのだが、まずは用件を伝える必要がある。

「私です。…声を聞けば判ると思います」
『ああ……。白長谷さん?』

電話の相手は、小夜子の苗字を知っていた。という事は、名前も知っている可能性は高い。
声は彼女と同じ年頃くらい。声変わりはしているようだが、まだ若い。

「……そうです。…あなたに訊きたい事があります」
『……なんなりと。どんなご用件かな?』

相手は言った。余裕を持った声だ。

「あなたは一体何者ですか?」
『……うーん、そうだねぇ。君を助けるために降臨した騎士ナイト、姫君を助けるためならこの身を犠牲にしても…』

電話の相手は自分をおちょくっているのか、それとも馬鹿にしているのか。
小夜子は電話の相手がこんな性格だとは思っていなかった。

「とぼけないで下さい」

流石に、小夜子でも怒った。
普段は温厚な彼女でも、怒る時は怒る。

『はっは。冗談だよ、冗談。だけど、理由はちゃんとある。キミはブレード・チルドレンを知っているかな?』
「…結崎さんから聞きました。呪われた子供だそうですね」

ブレード・チルドレン。それが彼女にとってのキーワードのひとつ。
何故かそのブレード・チルドレンと呼ばれる者達は、全て肋骨が1本欠けている。

『そう。この世に存在してはならない、呪われた子供達。僕はその中のひとりだ』

電話の相手は自分の正体を暴露してしまった。
小夜子は思う。……こんなすちゃらかな性格をした人物が、ブレード・チルドレンのひとりだと。
前に結崎ひよのから聞いている話は、肋骨が1本欠けているとか、成人したら必ず殺人鬼になるとか、そんな物騒な話。

『……ある意味で僕とキミは同類かもしれない。だけど、キミは人間だ』
「言っている意味がよくわかりません。……あなた、私にどうしろと」

いきなり自分と同類と言われた。何を言っているのかさっぱりわからない。

『電話をかけてきたのはキミだよ』
「う………」

痛い所を付いてくれる。一筋縄ではいかないという所である。
頭の回転は速そうだ。小夜子はそう思った。

『それに……年頃の女の子に、こんな寒い所にいさせるわけにはいかない』

その言葉に、小夜子は動揺した。
場所は屋上。現在の季節は冬。小夜子はコートは着ていない。
つまり、電話の相手は自分の現在位置を把握している人物。

小夜子は辺りを見回した。
そして……、彼女は驚愕する事となる。

「………あなたは」
「初めまして……じゃないね。僕の名前はカノン・ヒルベルト。ブレード・チルドレンのひとりさ」

少年は初めて自分自身を名乗った。
茶髪……、顔立ちはわりと美形。多分、女の子にモテるタイプ。
隙のなさそうな身のこなし。……外見からいくらでも情報は得る事は出来た。

「そう……、ですか。あなたが私を」
「うん。…まあね。キミは人間だ。……生きるんだ。今を生きろ…」

カノン・ヒルベルトは言った。言葉ひとつひとつを、小夜子に問い掛けるように。

「待って下さい。……私に何を言うのです? …あなたが、何故私を!」

次の瞬間、カノンの足が動いた。
小夜子はその動きを読む事ができず…………。


気付いた時には彼に抱擁されていた。

「……この状態なら逃げられない」
「は、離して下さいっ!」

小夜子はもがく。彼女にしてはかなりの抵抗だった。
対するカノンはじっと彼女を抱きしめていた。顔にかかる良いにおい。
カノンは目を瞑っていた。

「……だから生きるんだ。……これは……、キミの宿命だ」
「止めて下さい!」

小夜子は声を上げ、カノンを振り払おうとする。
カノンはバックステップを取り、着地する。

「………教えてください。あなた……、本当は何をしたいんですか?」
「どうもキミは警戒心が強いようだ。……鳴海歩が気を引くには充分だね」
「……鳴海……歩? …あなた、何処まで……」

知っているんだ。と言いかけて、

「情報は戦略の要。言うでしょ?」

その答えをカノンは言った。

あながち、間違ってはいないが……。
小夜子は大分カノンに警戒していた。当り前である。いきなり抱きついてくる少年を良く思う年頃の少女なんて、稀有な存在であるから。

そんな時、カノンは何かを小夜子に投げた。
小夜子はその何かをキャッチする。運動神経はいい方らしい。

「熱っ!?」

その物体を触った途端、彼女の皮膚が熱さを感知した。

「ああ…熱かったかな? 要る? ココアだけど」

その少年は一体何をしたいのだろうか。
小夜子は思った。まさか自分に好意を抱いている?
そんなのゴメンだ。…そこまで思っていないかもしれないが。

多分、今投げた缶ココアは気を引くためのアイテムだろう。

「……貰ったものですし」
「うん。よろしい」

小夜子は一応缶を振り、プルトップを開け、中身を飲み始める。
カノンはその場で大空を見上げる。

すると、天から何かが降ってきた。
それは、今は離れ離れだけど、中身は同じかもしれない2人のために降っているようなもの。

「……雪か。……雪が降る日は政変が行われるというけど、日本は平和だね」
「……そうですね」

小夜子はそれでも中身を飲んでいた。
そんな素直な自分が怖すぎて嫌になる。と思う。

「……どうしてこっちに来るのかな?」
「……さあ」

小夜子はカノンの方に近付いた。
何故だかわからない。……もっと彼に近付いてみたかったのか、それとも、自分から進んで行ったのか。

何もかもわからない。
けれど、それはそれでいいのかもしれない。

「……あなたは、私が好きなんですか?」
「好きというのは、キミを?」
「ええ」

小夜子は確認してみる。

「…………………好きだよ
「えっ?」

小夜子が言った途端、カノンはいきなり自らの唇を――――――――――――





完全に時間が止まっていた。
小夜子は、ああ、キスされているんだなとしか、理解できなかった。





唇を離すと、カノンは笑顔でこちらを向いていた。
何が起こったのか、全く理解したり、考えたりする事はできない。

「さーてと。そろそろ時間か」
「えっ? え……えーっと、あの……」

小夜子が慌て、そう言ったその時、カノン・ヒルベルトは立ち上がり、缶ココアを小夜子から奪った。
そして、あろうことか、中身を飲み始めた。

美味しそうに飲み始める。

「あっ…………」

これは小夜子もびっくりだ。いや、誰だってびっくりするだろう。
それが何を意味するか、小夜子はわかっている。

「…うん、今日は楽しかったよ。雪は神からのプレゼントかな?」
「……そうかもしれませんね」

カノン・ヒルベルトはそこから立ち去る。

「……結局、あの人は何がしたかったの……。カノン・ヒルベルト」





一方で、カノン・ヒルベルトは階段を降りていた。
そこでばったり会ったのは、浅月香介と高町亮子。


「「あ……」」
「やあお2人さん。今日はとてもいいものを見せてもらったよ。じゃ」
「「え?」」


今は敵対しているが、香介と亮子はカノンが何を言いたいかまったくわからなかった。
というか、唐突すぎた。彼が何を伝えたいか、何をしたいのか。






白長谷小夜子はまだ屋上にいた。
得た物は一体何だったのだろうか。

けれど、心の奥から何かいいものを得たかもしれない。
彼女は、そう思っていた。




















<あとがきみたいなもの>




無限のカノ小夜アンリミテッド・カノ小夜ワークス




――体はカノ小夜で出来ている

血潮はカノンで、心は小夜子
幾たびのカノ小夜を越えて破滅

ただ一度の抱擁もなく
ただ一度の接吻もなし

書き手はここに孤り
神の指でキーボードを打つ

ならば、我が生涯にあゆ小夜は不要ず
この体は、無限のカノ小夜で出来ていた








懺悔に近いです。……シエル先輩が、第七聖典持って私に向かってきているかもしれません(謎)

どうも、貴方の心の空想具現化マーブル・ファンタズム。月影蓮哉でございます。

どうやら私はシリアス専門かもしれません。自分でもそう考えてます。
じゃああのごきごき大騒動は(以下略)

執筆時、私は、FF-]の『ザナルカンドにて』をずっとかけていました。何故か知りませんが、エンドレスで。
SS書くのに必要なのか、そうでないのか自分でもわからないです。……何でエンドレスだったのだろうと。


時間帯としては、アニメ版スパイラルですね。白長谷小夜子、ハンターに狙われるの巻(なんじゃそりゃ)
アニメ版ではカノンが月臣学園に編入してないんですよね。…むぅ、彼はどうやって屋上に来たのだろうか(笑)

そして、カノンが一方的ですね……。抱擁して、ちゅーして、間接キスして、うわ、俺って何様だ(笑)
何だよ自分って思ってます。でもいいんです。私はカノ小夜大好きですから。



テニスしてる小夜ちゃん見て微笑むカノン、グッジョブ!
携帯電話で話しているのに小夜ちゃんの近くにいるカノン、グッジョブ!




いや、アニメ版スパイラルはここだけ見るべきだと私は思いますね(オイ)
こんなシーン入れるのだから、カノンは小夜子好きなんじゃないかなといろいろ妄想してしまいますが(何)

さて、これは本当にSSといえるのか……、はてさて、周囲の反応が怖かったりします。
それでは、また別の作品でお会いしましょう♪








小説完成日時 2004 4・25 22:34
加筆修正日時 2204 4・27 16:47