すぱいらるSSS
アンサンブル……
歩が小夜子の家に訪れていたある日の午後、圭の突然の要望により歩と小夜子のデュエットを
する事になった。彼女の家にはある程度の楽器は揃っており、ピアノを筆頭にフルート、
ヴァイオリン、サックスetc…と豊富なのである。そして、今いるメンバー、歩、小夜子、
圭の中で楽器を扱えるのは歩に小夜子、圭も扱えない事は無いのだが、二人には劣るので結局、
リクエスト側にまわったのだ。
「ねぇ、二人で何か演奏してよ」
「私はいいですけど…歩さんは?」
「…こいつが断って、諦めると思うか?」
「そうですね…圭さんは少し諦めの悪い所があるので…」
「鳴海の弟は良いとして、小夜ちゃんまでそんな事、言うなんて…」
オヨヨ…と言った感じに圭は泣き崩れる真似をした。どうやら小夜子は歩に少しではあるが、
その性格の影響を受けているようだった。まぁ、二人はこういう風に良いながらも準備を始めた。
歩は当然、ピアノを選択。ピアノの前に座って指慣らしをしていた。小夜子は自分の部屋に
戻って黒いケースを持って帰ってきた。縦約十センチ、横約四十センチほどのケースの蓋を
開けるとそこには金の光沢を放つフルートが入っていた。見た目にもそれは高級な物である事が
分かった。全体に装飾が施されていたが、一番目立つのはヘッドジョイントに施されている装飾
であった。歩は指慣らしをしながらもそれを横目で見ていた。
小夜子はチューニングの為にB音を出していると、それにあわせて歩もピアノの鍵盤を押した。
どうやら音が合っていたようだ。彼女は音階を奏でて楽器を暖めると同時に指慣らしも行った。
「圭さん、どんな曲がいいですか?」
「ん…、何でもいいけど、やっぱり二人の得意な曲」
「分かりました」
歩と小夜子は一瞬、見つめ合い、そして、演奏が始まった。ピアノの甘く流れるような音色。
フルートが奏でる高音域のシャープな音色。それは美しく調和し、更にお互いの音色の特色を
引き出していた。部屋にはその調和の取れた音色が響き渡っていた。窓から入ってくる午後の
日差しはスポットライト代わりとなって二人を照らしていた。
(注)B音…音楽でよく使われる単語の一つで、シ♭の事です。