HAPPY CHRISTMAS


      二人の生徒が月臣学園の屋上にいました。
      一人は女子生徒の結崎ひよの、もう一人は男子生徒の鳴海歩であった。
      歩はミカンページという雑誌を読んでいた。
      「そろそろですね。」
      雑誌を読んでいる歩にひよのは話しかけた。しかし
      「・・・・・・・。」
      雑誌を読んでいる歩は、ひよのの話しを全く無視していた。
      「もしもし、鳴海さん、聞いてます?」
      ひよのは聞いてみた。
      「・・・・・・・。」
      やはり返事はなかった。
      「な・る・み・さ・ん!!」
      ひよのは歩の耳の近くで怒鳴りました。
      「なんだ、うるさいな。レシピを覚えられないだろ。」
      歩は耳を押さえながら言いました。
      「レシピなんて見てやればいいじゃないですか!
      それより人の話しを聞いてください!」
      ほっぺたをぷぅー、と膨らまして言いました。
      「ああ、分かった分かった、なんだ。」
       半分、投げやりに言いました。
      「だから!そろそろですねって!」
      「????」
      歩は“分からない”といった顔をしていました。
      「え!知らないんですか!?」
       かなり、ひよのは驚いていた。
       「何がだ?」
      「クリスマスですよ。忘れたんですか?」
      「ああ、もうそんな時期か・・・」
      歩は、はるか昔の過去を思い出すような口調で言いました。
      「そうだ!鳴海さん、クリスマスどこか出かけませんか?」
      「いやだ。なんで俺があんたと出かけなきゃなんないんだ。」
       即答だった。何もそこまで嫌がらなくても、と思うんだが・・・
      「良いじゃないですか。いつも情報を提供してあげてるんですから。」
      「いやだ!誰がなんと言おうと俺は行かない。」
       歩は断固として行こうとしなかった。
      「そうですか・・」
      すると、ひよのはポケットから茶色の手帳を取り出しました。
      「鳴海さん、良いんですね?」
       そう言ったひよのの顔は笑顔だった。満面の笑み…だが、
      歩にとって世界一恐ろしいことが起きる、前兆だった。
      歩以外に人が見れば“天使の笑顔”だが、歩は“悪魔の笑顔”いや、
      “死神の笑顔”に見えたに違いない。
      歩はその笑顔を見ると寒気がした。
      「その手帳には俺の何がかいてあるんだ?」
      歩はいい答えは返ってこない、とは思いつつ聞いた。
      「鳴海さんの全て、と言っても過言でないほどいろいろ書いてありますよ。」
       ひよのは平然と答えました。
      「な、おまえどうやって・・・」
      歩の顔から血の気が引いてた。
      「どうします?」
      この時の顔も笑顔だった。
      「断ったら?」
       多分、次の言葉は『断れるんですか?』という返事だろうと思った。
      「断れるんですか?」
       案の定、歩の思ったとおりの答えが帰ってきた。
      「……わかった、……行こう。」
      「それでは、25日の夕方の5時に駅前の噴水で」
      「……ああ、」
      疲れ果てた口調で言いました。


      「ふう、あいつ怒っているな。」
      今は5時10分である。もう10分も遅刻しているのである。
      普通は遅刻していたら歩くペースは速くなるが、彼の場合はいつもと同じ
      ペースだった。マイペースと言うのも恐ろしい。
      『あいつ、時間に厳しいからな。』
      そう思っているならペースをあげたらどうだ?と思うんだが全くペースをあげなかった。
      駅前の噴水の前に来るとひよのは噴水の傍にあるベンチに座っていた。
      歩はほとんど制服姿しか見ていないので、今日のひよのの私服姿は新鮮に見えた。
      歩がベンチの方へ行こうとするとひよのはこっちに気付いたようだ。
      「あ、鳴海さん!」
      ひよのはこっちに向かって小走りで走ってきました。
      「もう!全く、女の子を待たすなんてマナー違反ですよ。」
      ほっぺたを、ぷぅー、と膨らまして文句をいいました。
      「ああ、分かった分かった。俺が悪かった。」
      「分かればいいんです。それじゃ行きましょう。」
      そう言って早々と行ってしまった。
      「あ、おい待て。」
      歩はひよのの後をただついて行くように歩いていた。
      「どこに行くんだ?」
      歩はひよのの横に並ぶとそう聞きました。
      「え、別に決めてませんけど。」
      ひよのはそう答えると「あ!」と言って近くにあったショーウィンドーに
      駆け寄った。
      「可愛いですね。」
      全く、歩の事を無視しているようだった。
      『はぁ、どうしてこうなるんだ?』 
      そんな事を考えて、ふと、ひよのが見ているショーウインドの横にあるショーウインドを見た。
      そこにはペンダントが飾られていた。歩はそのペンダントに目が止まった。
      ペンダントの形は、天使が羽を広げたような形で銀製のようだ。
      大きさはそれほど大きくなかったが、ペンダントの真中にカルシドニーと
      呼ばれる宝石がついていた。
      カルシドニーという宝石は持つものを守るという意味を持ち
      何でも首を突っ込みたがるひよのにちょうど良いと歩は思い
      ひよのが別のショーウインドに気を取られている間にそのペンダントを買った。

      
      ある公園の片隅にあるベンチで二人は休んでいました。
      「ふうー疲れました。」
      「当たり前だろ、あれだけ歩き回れば。」 
      「でも、楽しかったですね。」
      「ああ、まあな。」
      ひよのは歩の素直な反応に少し驚いた。
      「なんだあんた、その顔は。」
      「え、い、いえなんでもありませんよ。」
      歩はひよのの態度に不思議な顔をした。
      「もう遅いな、そろそろ帰るか。」
      そう言うとベンチから歩が立ち上がった。
      「あ、鳴海さんちゃんと・・・」
      「送ればいいんだろ。」
       「え、あ、はい。」


      「あのー、鳴海さん。」
      ひよのは遠慮がちに聞きました。
      「ん、なんだ?」
      「どうして今日はこんな素直なんですか?」
      歩は少し慌てたように
      「べ、別にいいだろ。それより、ほら、あんたの家についたぞ。」
       帰り道、ずっと今日の歩の素直な反応と、右手に何時の間に買ったのか
      分からない紙袋のことをひよのは考えていたため、
      全然、家に着いたことに気づいていなかった。
      「え、あ、ありがとうございました。鳴海さん、またどこかにでかけましょうね。」
      ひよのが家に入りかけると
      「あ、おい、あんた!」
      急に歩はひよのを呼び止めた。
      「ん、なんですか?」
      「やる。」
      さっきからずっと右手に持っていた紙袋をひよのに渡した。
      「なんですか?これ」
      「クリスマスプレゼントだ。」
      ひよのはかなり驚いた。歩が用意をしているとは思わなかったからである。
      「え、私、何も用意してませんよ。」
      「ああ、だから・・・」
      そう言った瞬間、急にひよのの視界が暗くなり唇に暖かい感触が
      伝わってきた。
      「な!鳴海さん。」
      「じゃあな。」
      ひよのは一瞬、あっけに取られたがすぐに立ち直り、
      「あ、鳴海さんちゃんと責任とってくださいよ!」
      何も歩は返事もせず帰っていったが、その背中は
      『ちゃんと分かっている』と返事をしていた。


      その日の夜、ひよのは自分の部屋で電気も付けずにいた。
      月が出ていたので、電気を付けなくても明るかった。
      彼女は、歩から貰ったペンダントを両手でそっと包み込むように
      持っていた。そして
      「ありがとうございます。歩さん。」
      彼女はそう呟いた。
      その呟きを聞いた者は、空に浮かぶ月だけだった。



紅焔さんありがとうございます。少しここに感想
(みたいなもの)を書かせていただきます。
クリスマスの話しですね。私は今部活の演劇部でクリスマスの話しをやってます。あ、関係ないですね。
あー坊の「カルシドニーという宝石は持つものを守るという意味を持ち
何でも首を突っ込みたがるひよのにちょうど良いと歩は思い」
の所が優しいなって思いました。
送ってくださりありがとうございました。
      


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