すぱいらるSSS
放課後…… そのに
(注)前作の放課後とは繋がっていませんので、あしからず
『美味しい喫茶店を見つけたんですよ。一緒に行きませんか?』
昼休みにそう恋人の白長谷小夜子に言われて、とある喫茶店に一緒にいる鳴海歩はコーヒーを
飲みながら彼女の姿を眺めていた。普段見慣れている制服姿も環境が変われば新鮮に感じる
物だな、と思いながらもう一口、コーヒーを口に入れた。小夜子は幸せそうに紅茶とチーズ
ケーキを食べていた。
「おいしいですよ」
「ん、そうなのか?それなら良いが」
「食べてみますか?」
彼女は一口サイズにチーズケーキを切ると、フォークに刺しそれを歩に差し出してきた。
何の悪意も無く、ただ歩に食べてもらいたいと言う気持ちで小夜子は差し出したのだろが、歩に
とっては恥ずかしい事極まりなかった。
「…俺にそれを食べろと…」
「?どうかしたんですか?」
彼女の言葉から悪意は全く感じられなかった。だからこそ、性質が悪かった。…しかし、歩も
男である。決意を決める時は決めなければいけない。歩は仕方なしにそれを食べた。
チーズケーキ独特の甘い香りが鼻の奥をくすぐった。甘い物が苦手である歩だったが、何故か
すんなりとそのチーズケーキが食べる事が出来た。理由は……分かっているが、意識すれば顔に
出るだろう。小夜子は歩が食べたのを見て「おいしいですか?」と聞いてきた。それに頷くだけ
で答えたが、顔が少し赤くなってしまった。歩にとって甘い体験をした放課後だった。