デカルト・パスカル(筑摩世界文学大系 19) 筑摩書房 1971
物理学者であり、また近代哲学の扉を開いたデカルトの名を文学全集の中に見
るというのも不思議な気がするのではないでしょうか。思想家、物理学者、数学
者として名高いパスカルをデカルト並べるのもなかなかわからないことなのです
が、森有正の著作の中ではデカルトの研究とパスカルの研究に大きな部分を占め
ているので、この二人の哲学および思想はヨーロッパでは同時に学ばなければな
らないのかも知れません。そんなことを考えながらこの本の解説のページを開いたらこの思想
的にはほとんど対極にある二人がなぜ並んでわれわれの前に立つのかにいついてかなり詳しく
書いてあるので、だいぶ疑問が解けました。そこではやはりその思想(人間の生き方を洞察し
人々に一つの道標を示そうとした)が大きく取り上げられています。
そういう正統的な読み方はいささか重いので、私は文学全集の一冊として読んでいくことに
しています。そうすると文章表現の正確さや人間心理の奥を見すかされるような数々の言葉に
出会うことがあってまた別種の読む楽しみがあります。
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