シモーヌ・ヴェイユの生涯 大木 健 勁草書房 1969 初1964
わずか三四歳で病に倒れた(というよりも与えられた生を完全に燃焼し尽くし
た)一人の女性が第二次世界大戦後、彼女の故国フランスだけではなく、世界の
いたるところに人間回復の働きをうながす衝撃を与えたことは一つの奇跡であろ
うか。ユダヤ系であったことでナチ占領下のフランスにとどまることが出来ず、
アメリカに亡命し、次いでイギリスに拠点を置いたド・ゴールの「自由フランス」
に参加する。その間も故国の人々の苦しみをともに担うためには食事さえ十分に摂ることを拒
むという自己に対する厳しさを保ち続けた強靱な意志の持ち主でもあった。もともと病気がち
であったにもかかわらず工場で女工として苦しい労働を経験する。病気の体をおして亡命政権
の中で限界以上に働き、特に戦後のフランスの再建計画の構築に力を尽くしている中で殉教者
のような生き方を貫いて倒れたのだった。
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