根を持つこと(シモーヌ・ヴェーユ著作集 X) 春秋社 1967
自分の思想を実践によって裏づけることを常に自己(他者にではなく)に対し
て苛酷なまでに求めた精神の偉大さにこの集で出会うことができます。その自己
に対する厳格さが時には周囲の人々に心理的圧迫感をあたえたのかも知れません。
しかし、自身を飢えさせることによってでなくては人は飢えている人々の苦痛を
ほんとうに担うことにはならないのだという考え方(行動する方向)を持つ人は、
現にいろいろな状況の中で苦しみを受けている人々が存在すること自体がが自分にとっても堪え
がたい苦しみであるのです。すぐれた知性の人であったヴェーユが抑圧された状態の下でそこか
ら脱け出す方法も手段も知らず、甘んじて苦しみを受けながら生活する人々に思いを寄せる時の
同情と怒りの感情の激しさは人を何らかの行動に向かわせないではおかないのです。
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