重力と恩寵(シモーヌ・ヴェーユ著作集 V) 春秋社 1968
著作集V。アフォリズムとして読むことができる断章の集成「重力と恩寵」、
三幕の戯曲「救われたヴェネチア」を収載。つたない紹介よりも、原書の編者で
あり困難な時代にシモーヌ・ヴェーユを物心両面で支援し続けたG・ティボンの
長文の序文から少しばかり引用した方がいいと思うのでそうします。
「――ある種の偉大な作品がそうであるように、シモーヌ・ヴェーユの文章も、
解釈をほどこせばどうしても密度が低くなり、本来の意味からそれてしまうたぐいのものであ
る。このような文章を紹介する資格がかろうじて私に与えられているのは、ひとえに、著者と
私を結ぶ友情と、二人で交わした何度かの長時間の会話のおかげである。そのおかげで私は平
坦な道をとおって彼女の思想に近づくことができ、また、脈絡を欠いた表現や練り上げの不充
分ないくつかの表現形式に、正確な照明と有機的な前後関係を与えることもできたのである。
といっても、パスカルの「パンセ」の場合と同じように、ここにあるのも、その日その日に、
しかも往々にして急いで積み上げられた単なる待歯石のかずかずでしかないことを忘れてはな
らない。それらはもっと完全な建築を目ざしていたのだが、悲しいことにそれはとうとう日の
目を見なかったのである。――」
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