キリスト教史 T 半田元夫・今野國雄 山川出版社 1977
イエスの誕生から15世紀まで、西方の教会(ローマ・カトリック)の歴史をたどる。
はじめに福音書によるイエスの生涯とその死の意味を当時のユダヤ人の生きた複雑な社会
背景に光を当てながら解説している。その後のキリスト教世界におおきな影響を与えるこ
とになる「イエスを殺したのは誰か?」という問題について慎重に扱っているのが注意を
ひく。これについては多くの仮説が提示されているけれども本書でもそれらの中で主要な
説を紹介して偏見や護教的意図によるキリスト殺しの罪のなすりつけを避けることを読者に求める。そ
れは福音書のイエスの教えにすこしでも近づき、イエスが求めた人間愛の実践へと導くはずである。
本書はこの序説の後、原始教団の成立とローマ帝国による迫害の時代から国家公認の教会への変身、
西方カトリックの形成へと進み、十字軍派遣など多くの危機や改革を経て新しい時代を迎えようとする
までを述べている。
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