秋風秋雨人を愁殺す 武田泰淳 筑摩書房 1968
秋瑾(王ヘンに菫)女士の伝記である。彼女は清朝末期に異民族であ
る満洲族の支配を打倒した辛亥革命の前駆をなした一群の革命家の一人
で事の成る日を見ることなく処刑された。魯迅と同じ世代で同じく日本
に留学。留学生仲間や亡命して滞在している活動家たちとの交流の中で、
中国の近代化を実現するためには革命を発起して清朝を打倒して漢民族
の復権をはかる以外に道がないことを確信して帰国し、同志と共に行動
の時を探るうちに密偵や裏切り、または油断によって挫折しなければならなかった。
孫文の指導による辛亥革命の成功の陰には多くのこのような解放闘争に生命をなげう
った人々の血と涙があった。本書の半分近くは女士の最も信頼した同士であり、運動の
成果を見ることなく刑死した徐錫麟の生涯にページを割いている。革命運動の前期には
複数の結社が各地に拠点を置いて活発な動きを見せ、互いに連絡し合って目的を達成し
ようとしていた。しかし、通信や連絡の手段の不備や結社間の路線の違いなどが幾多の
犠牲を生む結果となっていた。
魯迅の故郷である紹興はまた秋瑾(今は文字パレットにこの字がない、王ヘンに菫)
の原籍もこの町でありこの二人の記念館がある。
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