わが涙よわが歌となれ 原崎百子 新教出版社 1979
肺ガンで逝ったある牧師夫人の遺作です。牧師夫人と紹介するのは本
書の中にそのように書いてあるからで、それはひとつの肩書きにすぎま
せん。本当は一人の女性が共に生きた夫や子供、それに親しい人々に残
した言葉と言うべきでしょう。
死を免れない病気に冒されている現実を知った時から、一面ではそれ
を冷静に受け容れながらも、さまざまな思いのかけめぐる日々、命の火
が細ってゆくのを意識の底に持ちながら書きつづった言葉には堪えがた
い切なさがこもっています。子供たちにテープに吹き込んで残した言葉にはそれが切々と
伝わってきます。「わが涙」という表題に使われた筆者の詩の中の言葉の意味がわかるよ
うな気がします。
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