わが回想 T イリヤ・エレンブルグ 木村浩訳 朝日新聞社 1968
冒頭に回想録というものが如何に筆者の主観によって描かれるものかを用心深く読
者に警告しています。そして幼年時代、偉大なトルストイの晩年の姿を目撃した頃か
らやがて目にする革命前夜の騒然としたロシヤ社会の様相。青春をパリで過ごし若き
ピカソやモジリアー二、当時は皆まだ無名だった多くの詩人や画家との交友を回想し
ています。また、亡命中のレーニンと出会い、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ「熱
情」について熱心に語るレーニンの言葉に感動する場面は有為の青年を心から愛した革命家の面影
が眼前に浮かぶようです。この書の後半は革命の渦巻く故国に帰って活動する中で接した多くの人
たち(詩人でも、作家でもみな革命の完成のためにどんな部署であろうと働いた)の情熱や苦悩を
描き出しています。
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