
日本切支丹宗門史 下 レオン・パジェス 吉田小五郎訳 岩波文庫 1983 初1938
1651年、徹底的なキリスト教団圧政策をすすめた将軍家光が死んだ。この時まで
に日本の土に播かれたキリストの福音の種はほとんど壊滅してしまっていた。禁を冒し
て潜入して来る宣教師たちや日本人司祭も根絶やしと言っていい状態にまで追いつめら
れた。これ以後はいわゆる隠れキリシタンの時代に入るのである。本書に名前が記され
た殉教者は夥しい数にのぼる。しかし、名も記されず、誰にも知られることなく苦難の
中で死んでいった人々の数はどれほど多いことであろう。虐殺に等しい刑罰をもって脅
かしても人間の心の自由を奪うことが決してできないことを明治の開国後すぐに二百年
以上も長く信仰を伝えてきた存在が明らかにしているのである。
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