
福音書 塚本虎二訳 岩波文庫 1980 初1963
聖書を初めて読む人が一読してその意味がわかることが何よりも必要なことだとこの
訳者は早くから考えていたようである。内村鑑三に師事し内村から「大正改訳の聖書の
文体が旧明治訳のに比べて文体の質が落ちる、改訳すべきだ。」と促されて自らの理想
とする口語の試訳の一部を見せたところ内村の意にかなわなかったらしい。訳者は自分
の考えを貫き新約聖書全巻の口語訳を完成させた。やがて訳者の先見したようにいくつ
かの口語訳聖書が現れるようになりどこの教会でも口語訳聖書を用いているのが現状で
ある。ただ、口語訳が読んで意味がすぐ分かるかどうかはそれを読む人の求める立場に
よって違ってくるので一概に言えないものがある。
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