
悪 霊 ドストエーフスキイ全集 9−10 米川正夫訳 河出書房新社 1960
上下2巻に収められた長編小説。下巻には中篇「賭博者」も入っている。巻頭に
新約聖書のルカ福音書にある悪鬼が豚の群を湖に追い立てて溺れさせる話を引いて
いるのが表題の「悪霊」の意味である。ピョートル・ヴェルホーヴェンスキイとい
う野心満々の男のもとに集まる色さまざまの青年たちが首領のピョートルの偽革命
理論にひきずられ、あげくは無意味な殺人や自殺がそこに生じると言えばあまりに
単純化し過ぎるだろうか。無垢というほどではないが、純粋に社会改良を目指して
挫折する青年たちははたして豚なのか?また、ピョートルはそれほど強力な悪鬼な
のか?という問いからこの小説を読むこともできる。
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