
現代日本文学史(現代日本文学全集 別1) 筑摩書房 1959
明治文学、大正文学あるいは昭和文学というように日本の現代文学は天皇制の元号
を頭に冠するのが便宜上そうせざるを得ないものらしい。実際、西暦の年代で1890年
代の文学というより明治20年代の詩、小説と言われると詩人や文学者の肖像や作品
が脳裏に浮かぶと言ってもいいぐらいである。われわれにはやはり戦後文学と言われ
る第二次大戦後の文学が切実な主題を扱っており、その衝撃度も強い。ただ、言文一
致という日本文化史全体の上でも画期的な成し遂げた明治初期の二葉亭四迷らの苦心
の業績に深く感銘を受ける。それはそれまでのあらゆる面での文章表現の方法を一変
して今日のわれわれにまでその恩恵をもたらしているからである。
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