
ロシア詩の歴史(古代からプーシキンにいたる) 川崎隆司 恒文社 1993
もっとも早い時期の「イーゴリ公軍記」からロシア文学の最高峰と称えられるプー
シキンまでの流れを見ることが出来る。「プーシキンの生活と詩」という項目に多く
のページが当てられているのは、どの時代にもまさって人々のすべての生活を抑圧し
ていたツァーリを頂点とする廷臣・官僚たちによる強力な専制政治がはばをきかして
いた中で奪うことの出来ない自由を称揚したこの詩人の作品がが後のロシア文学の進
むべき道標となったからでもあろう。もちろん、プーシキンは突然現れたのでなく民
衆による古謡の時代から歌い継がれた自由の精神の伝統がこの偉大な詩人を生んだの
である。
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