
日本的なるものをめぐって(全集・現代文学の発見 11) 学藝書林 1968
この本一冊で政治、経済、文化のまるごとを取りあげて日本的なものを問うのはと
んでもない冒険である。一方、千万言を費やせばすべて了解できるというものでもな
いのがわれわれの生きている現実なのである。大体が日本的ということ自体、その向
こう側にある日本的でないものが見えているから指摘できるのであるから、それこそ
近ごろ誰でも口にするグローバルな視点に立たなければ自分の足元さえはっきり見え
ないのだ。保田与重郎や小林秀雄や秋元松代や花田清輝ほかの文章の中でいちばん読
み応えのある坂口安吾の「日本文化私観」は1942年に書かれたものなのに現在の日本
人のど肝を抜く力を失っていない。ということは?
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