
戦後思想の出発(戦後日本思想大系 1) 日高六郎編 筑摩書房 1968
戦後思想という概念はこの大系が編集された戦後23年という時点で深刻な反省が
なされていたと言える。ごく少数の人々を除いて真の意味での近代の把握がなされな
いまま戦前(どこからどこまでの時期を指すかは簡単には言えないが)、戦中を突っ
走ったあげく敗戦の大破局に遭遇し、どさくさの中で指導者たちの「一億総懺悔」に
象徴される無責任体質をずるずると容認させられたまま現在に至っていると言ってい
いわれわれの国なのである。今これらを読み返してみて、われわれの歴史の貴重な教
訓である戦中戦後の苛酷な社会状況の経験を風化させてしまってはならないのではな
いかという思いを強くする。
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