
民話と少年物語(トルストイ全集 13) 中村白葉訳 河出書房新社 1973
「イワンのばか」という作品は子供の読み物誰でも思っている。だが、何度読んで
もこれは何でも分かっているつもりの大人のために書かれたのではないかと思えるの
である。老悪魔が失敗した3匹の小悪魔の仇討ちにイワンをあの手この手でひどい目
に遭わせようとしてどの手もイワンを困らせることができない。悪魔の計算違いは、
人間というものは自分の利益のことしか考えない存在だと決めてかかり、イワンも当
然そういう人間の一人だと思ったのが見当違いだったことである。頭を使って他人を
出し抜くことを提案する悪魔の言葉を、手を使って労働するように知識や才覚ではな
く文字どおり頭を使って労働するのだと、働き者のイワンの仲間たちが勘違いすると
ころにこのお話しの凄さがある。この巻には、こうした単純な物語やお話しを読みな
がら次代を担う子供たちがほんとうの人間性を養ってくれることを願った作品が収載
されている。
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