
死刑執行人の歌 下 ノーマン・メイラー 岡枝慎二訳 同文書院 1998
この事件がアメリカ中の関心を呼んだ本当の理由は何だったのだろうか?ユタとい
うアメリカ史の中で州の成立の事情がきわめて特異であり、現在も州都ソルトレーク
をモルモン教(正確には末日聖徒イエス・キリスト教会)の本拠としていることがさ
まざまな社会的類推を生むことが原因なのであろうか?ともあれ、獄中で死刑の執行
を待つゲイリー・ギルモアの死後に出版されるであろう語録なり、伝記なりの版権を
求めてジャーナリズムが動きまわる様は「これがアメリカなのか」と思わせるものが
ある。メイラーのこの作品ではそれが実に克明に描かれるほか、ゲイリーの魂と深く
結びついていた女性(マイケル・ギルモアの本ではほとんど触れられていない。)に
ついて描かれる。
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