
心臓を貫かれて マイケル・ギルモア 村上春樹訳 文藝春秋 1997初1996
1976年夏にアメリカ・ユタ州で起こった殺人事件の犯人ゲーリー・ギルモアの
弟マイケル・ギルモアが書いた家族の歴史である。この事件は当時のアメリカ社会に
いろいろな波紋を投げかけたと言われる。この本の中でかなり詳細に書かれているの
がモルモン教(これはニックネームのようなもの、正しい名称は末日聖徒イエス・キ
リスト教会)の歴史の中の暗い陰の部分である。それはこの宗団の本質的な性格を表
しているのかも知れない、罪とか贖いについての極めて中世的または古代的な思想な
のである。モルモン教の本拠であるユタ州の厳格な信徒の家系の中に生じたこの事件
はまた極めてアメリカ的なのではあるまいか。
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