
銃と十字架 遠藤周作 中央公論社 1979
16世紀の半ば、インドのゴアで出会った一人の日本人に導かれて来航したイエズ
ス会のフランシスコ・シャビエルによって日本にキリスト教が伝えられた。当時の日
本人がこの新しい宗教を受け入れ、その信仰に深く帰依したのにはさまざまな要素が
そこにあったのは確かである。各地に大小の支配者が割拠し、民衆は戦争の恐怖と苦
しみが日常のこととなっていた。キリシタンと呼ばれたキリスト教の興隆の時代は長
くは続かなかった。烈しい弾圧と迫害の中で信仰を貫く者、棄教する者、さらに数多
くの殉教者を見ることになった。この小説はその殉教者の一人である日本人神父ペド
ロ・岐部の生涯を通して「日本人のキリスト教」を考える著者の重要な作品の一つで
ある。
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