
リルケと軽業師 富士川英郎 弘文堂 1958
リルケの作品の翻訳を多く世に送っている著者の本の中でも最も導かれることの
多かったものである。あの難解な「ドゥイノの悲歌」を読むための重要な手がかり
を与えられた。この本の中で読者はドィイノの第五の悲歌をテーマに読み解くヒン
トを与えられ、深い霧の中に行く手を示す灯を見出すであろう。ピカソの「サルタ
ンバンク(軽業師)」の構図をもとに第五の悲歌の視覚的解釈からリルケの精神世
界に入り込もうとする。言葉だけでリルケを理解しようとしていた者にとって衝撃
的な示唆であった。この本では、そのほかに数篇の詩が同じ方法論を用いてリルケ
理解を深めようとしている。
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