
素顔のモルモン教 高橋 弘 新教出版社 1996
モルモン教はアメリカ生まれの、ある意味では最もアメリカ的な宗教と言ってい
いのではないだろうか。モルモン書(明治時代に翻訳されたときにはモルモン経と
称してつい最近全面的な改訳がなされた時にモルモン書と変えた。)を聖書の上に
位置する聖典としてあがめ、そのほかに教祖であるジョセフ・スミスが受けた啓示
をまとめた「教義と聖約」をその次に置く。一般にキリスト教の世界では異端とま
では見なされないまでも極めて異質な集団と言える。その教義も聖書の自由な解釈
から生まれたのではないかと思われる。何よりも興味深いのはアメリカ西部開拓史
を考える時にこのモルモン教徒の存在を抜きにはできないことである。この本でか
なり詳細に報告されている教団内部の問題はかなりゴシップ的であるように思われ
るが熱心な信徒はこのような本を読んでも(多分読まないだろう)さして重要なこ
ととは取っていないかも知れない。19世紀アメリカ史の必然的な産物であるとい
う見方からモルモン教を研究してみるのは有意義であろう。
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