
最底辺 ギュンター・ヴァルラフ 岩波書店 1987
80年代の西ドイツの社会が、ネオ・ナチなどの極右勢力がはばを利かす要因と
なる産業界の暗い陰の部分を内部に抱いている実情を一ジャーナリストが文字どお
り命を張ってあぶり出した記録である。日本でも同じことを企業がやっているのが
指摘されているが安い賃金で外国人労働者に危険で汚い仕事を強いる、出稼ぎ外国
人労働者に対する蔑視、憎悪が西ドイツでは日常茶飯事、市民の常識的感情である
ことが明らかにされる。この本の出版によって産業界の暗い部分が暴かれると出版
差し止めや内容の削除を求める訴えがなされ裁判に持ち込まれた。しかし、書かれ
た内容の九〇%以上が真実であることが認められたのである。祖国が陥っている悪
に人々の目を向け、人間らしさの回復を強く求めている書である。
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