
ガルシン全集 中村 融訳 青蛾書房 1973
フセヴォーロド・ミハーイロヴィッチ・ガルシン(1855−1888)
ロシヤ文学の中でも特別の光を放つこの作家の小説は人の心の底にある善の力を
信じさせるものがある。短い生涯に書かれた「四日間」「赤い花」「信号」等の短
編に代表されるガルシンの作品群の世界には人間存在に対する問いかけがあり、そ
れに自ら応えるかのような人間存在への深い信頼が描かれている。バルカン地域を
戦場としたロシヤと当時の世界では強大な力を持っていたトルコとの戦争(露土戦
争)に従軍して人間が殺し合うことの悲惨、その空しさに精神に深い傷を受けたガ
ルシンの静かではあるが読者の心にひびく声がどの作品からも聞こえてくる。
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