
ヨシュア記・士師記・ルツ記 ATD・NTD聖書註解刊行会 2000
ルツ記は画家ミレーの名画「落ち穂拾い」の題材となった物語。古代イスラエル
史を美しく彩る異民族との融和を主題とするある意味では聖書の中で最も格調高い
物語である。
問題は、ヨシュア記・士師記に記述されているカナン侵入と定着後の周辺諸民族
との相次ぐ戦争の記録である。征服戦を聖戦と意識して他民族を殺戮する独善は古
代にはあまりにも当然のことであったのかも知れない。しかし、聖典に記述されて
いることは何であってもありがたく受容してしまうのは正しいことなのか?この註
解においても言葉の意味のつじつまを合わせるのに懸命で人の存在の重さについて
の考察が不充分ではないかと言いたい。今の時代に生きる者にとってそれは註解の
域を超えているといって済まされはしない。
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