
神への告発 箙 田鶴子 筑摩書房(ちくま文庫) 1987
箙 田鶴子(1934−)
出生時、仮死状態であったことから脳性小児マヒをにかかり肢体不自由という苦難
を負った。強い意志と努力で作家の道を志し実現したすぐれた女性である。この本を
読んだ時、人間を知るためには一冊を撰ぶとしたらこの本をおいてほかにないと思っ
た。愛情を注いでくれた父を早く亡くし、その後は母をはじめ家族に疎まれる生活が
待っていた。心身に障害のある人々のための寮に入って知った人間のさまざまな姿を
描いたページは健常と思っている者の心の障害こそ問題なのだと読む者自らが反省さ
せられるのである。
|