
ドストエフスキイの文学 小林秀雄 角川書店 1968
文芸批評を確立したといわれる小林秀雄はランボーとドストエフスキーについて
は評論というより強烈な個人的思い入れによる感情移入ではないかとさえ思える時
がある。それだけにかなり難解というのか、晦渋というのか私には分かりにくい文
章である。しかし、著者も言っているように最後にはまたドストエフスキーの作品
そのものに立ち戻ってしまうほかないのは確かであろう。そして、読者は自分の足
でドストエフスキーの世界を探索していくのである。この本には「罪と罰」「白痴」
について書かれたもののほかに、「ドストエフスキイ七十五年祭における講演」が
収録されているが、これがロシア史、ロシア政治史、ロシア文学史をからめた内容
の濃いものであり、読んでいても楽しくなる。
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