
謎ときカラマーゾフの兄弟 江川 卓 新潮社 1991
江川卓(1927−2001)
著者はロシア・ソヴェト文学の翻訳で大きな仕事を残した人であるがこの謎とき
シリーズはドストエフスキーの長編の読み解きを評論でありながら小難しくないの
がわれわれのようなただのドストエフスキー愛好者にはありがたい。すぐれた文学
作品には必ず見られるのだが、ドストエフスキーの場合におけるロシア語の微妙な
表現が作品の重要なキーワードになっていることを例をあげて提示されているとこ
ろはロシア語の初歩程度の人でも理解できるように配慮されたのではないかと思う。
作品に秘められた数々の謎にさえ気付かなかった者にとっては暗い道に明かりを得
た感がある。
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