
ヨゼフとその兄弟たち(1) トーマス・マン 新潮社 1978 初1972
2巻の本を(2)の方を先に紹介したのは書架にそのように並んでいたか
らで、それ以外の理由はありません。旧約聖書の族長物語といわれるものの
中でもヨゼフの物語は最もよく知られた物語であるので、ヨゼフの生涯を熟
知している読者も多い。その場合はこの小説をどこから読んでも理解してい
くことができる。複雑な人間関係の一つひとつにかかわる問題を読者に考え
させる構成になっている。それが周到に前後を結びつけて大きな時間と空間
の中を漂泊する人間たちの物語を完結させているのである。